- なんでも
- 富士山
- 22/12/13 21:20:36
「おなかすいた」「今日ご飯なに?」夕飯の匂いに誘われ台所へ集まる、髪を結いあげた少女たち。花街の夜に花を咲かせる舞妓も、その時ばかりは「普通の女の子」に戻る――。
「置屋では朝ごはんはなし。お昼ごはんも軽くお米とお漬物やお茶漬けをいただく程度ですが、その代わりにお座敷に出る前の夜ご飯はとても量が多いんです。
お母さん(置屋の主人)の実母がご飯を作ってくれていたのですが、目玉焼きがふたつのった山盛りのチャーハンに500グラムくらいのハンバーグが出されたときは苦しかったですね……。残り物を捨てることは許されないので、『明日食べます』と取っておいて次の日の夜にいただくのですが、冷蔵庫でなく食器棚に保管してあるので夏場などは変な匂いがしてくる。でもお母さんは、『糸ひいてないから食べよし。豚にならんように気を付けよしや』と(苦笑)。戸棚に眠っていた消費期限が3、4年切れた酸っぱくて変な味のマヨネーズが、料理に大量にかかっていたこともありました。理不尽だと感じても、絶対に文句なんて言えません」
「極端な食生活なので、急激に痩せてしまうか、太ってしまうかのどちらかが多いのです。私は食べては吐いてを繰り返して激やせしましたが、太ってしまったことでお母さんから『肥えている』と嫌味を言われ続け、拒食症になってしまったお姉さんがいました。そのお姉さんはまかないもお客さんにいただいたお食事も、全部吐いてしまうようになり、唯一口にできるドラッグストアなどで売っている離乳食を大量に買い込んでいました。とても痛々しくて、見ていられませんでした」(桐貴さん)
元舞妓のAさんも苦しそうに当時を振り返る。
「私の置屋のお母さんは食事を出すとき、毎回必ず『豚の餌ができたえ』と言ってテーブルに皿をバンと叩きつけるように置くんです。置屋で飼っている犬にあげる予定だった鶏のささみ肉を食卓に出されたこともありました。犬の方が私よりも身分が上でしたので、犬に三つ指ついてご挨拶をするように言われることも……。お母さんの作るごはんを身体が拒絶して、食べられなくなってしまって。どんどん痩せ細っていくのに、毎日豚と言われるので、もっと痩せなきゃと思い込んで筋トレをして……。あの時は死を考えてしまうほどつらかったです」
桐貴さんは「子供が親を選べないことを表した“親ガチャ”という言葉がありますが、花街は“置屋ガチャ”状態なのです」と語る。
「舞妓のことを考えた食事を作ってくれている置屋があると信じたいですが、いざ入ってみないと実態が分からない。食事を作る方にもいろいろな事情や苦労があるのはわかりますが、最低限の健康は守られてほしい」
https://bunshun.jp/articles/-/59317
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