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米CDC「ワクチンより自然免疫が効果」デマの裏側
──フェイクニュースが広がりやすい仕組みを解説
2022/09/14 5:30
今月に入り、「アメリカのCDC(疾病予防管理センター)がワクチンよりも自然免疫のほうが効果があると認めた」という情報が広まり、話題となった。英文記事を引用したTwitter投稿は、5000リツイート、1.5万いいねを集めるなど拡散した。
CDCはアメリカ国内のさまざまな健康問題に対応する組織で、新型コロナ対策の司令塔でもある。そのため、ここまで話が大きくなった。
しかし、これはデマであり、誤りだ。引用された記事は“反科学的な医療情報や反ワクチンに関する陰謀論などを多く発信している”として、Facebookがコンテンツのシェアを禁止しているサイトである。何よりCDCは、「予防接種を受けることは、COVID-19に感染するよりも、より安全に防御力を高めることができる方法」であると、公式ウェブサイト上に記載している。
■デマに利用される公共機関
公的機関がワクチンデマに利用される例は少なくない。
例えば以前、「国の専門機関がワクチンに効果がないと認めた」というテキストとともに、国立感染症研究所のリリースの一部を切り取った画像を貼った、誤ったツイートが拡散された。
これに対して、国立感染症研究所がリリースを出し、「元々の内容を大きく変えたり、自らの主張に都合のいいように一部の文言だけを切り出して使用することは、当所が誤った内容を発信している印象を与えるだけでなく、科学を踏まえた健全な社会の議論を歪めてしまうことを強く懸念しています」と注意喚起するに至っている。
ワクチンデマは、SNS企業などが対策を講じているにもかかわらず、世界中のあらゆる言語で拡散しているのが現状だ。また特に広まるものとして、前述のように「公的機関が発表した」「政府が発表した」などの権威による理由付けがなされているものがある。
一見すると、コロナワクチン接種を推奨しているそれらの機関が、「ワクチンには効果がない」という類いのことを発表したというのは、荒唐無稽なように聞こえる。しかし、この理由付けこそがフェイクニュース拡散において重要な役割を果たす。
ドイツの研究では、完全に誤ったフェイクニュースよりも、部分的に誤ったフェイクニュースのほうが信頼性は高く説得力があり、訂正が困難であることが明らかになっている。
国立感染症研究所のケースでいうと、同機関は確かにリリースを打っており、切り取られた部分も文章には書いていた。しかし、それを誤った文脈で提示することで、「国の専門機関がワクチンに効果がないと認めた」というミスリードな投稿につなげたのである。これにより投稿の信憑性が増す。
今回の件でも、CDCは今年8月にガイドラインを簡素化して、濃厚接触者の隔離を不要とし、代わりに10日間は高性能のマスクを装着することや、5日目に検査を受けることなどを求めた。これを根拠に反ワクチンサイトでは、「CDCがワクチンよりも感染による免疫のほうが有効と判断した」といった拡大解釈がなされていたのである。
さらに、その情報が日本に輸入される際には、「CDCについて言及している英語のニュースサイトがこのように述べている」と紹介される。英語のニュースソースをいちいち確認しにいく人は日本にはほとんどおらず、「英語のニュースに書かれているんだ」という事実が信憑性を飛躍的に高めるのである。
人は「自分の信じたいものを信じてしまう」というバイアス(確証バイアス)を持っている。反ワクチンの人は、このように一部事実を含んだり、権威付けされたりしたミスリーディングな情報を見ると、思わずそれを信じて拡散してしまうのである。
続く
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