• No.3 草刈り(まさお)

    22/07/20 17:01:04

    ■基本が身に付かず

     その辺りはテレビドラマや映画とくらべても、手ぬるく見えるようだ。さる50代の女性は、

    「人気ドラマで映画化もされた『SP』では、首相が狙撃されたとき、岡田准一演じる警視庁のSPは銃声の後、弾丸が当たらないように元首相を転ばせていました。ドラマにそういう場面があるくらいだから、SPはそうするものだと思っていたのですが」

     と感想を述べるが、現実にも同様の例はあった。1995年に警察庁の國松孝次長官(当時)が銃撃された際、秘書官がすぐ、倒れた國松氏に覆いかぶさり、発砲が続くなか、引きずって國松氏の体を安全な場所まで移動させたのだ。その後、國松氏が再び要職を務めることができるまでに回復したのは、よく知られる通りである。

     先の警視庁SP関係者もこう話す。

    「なにか大きな音がしたら、真っ先に警護対象者に近づき、対象者の盾になるようにガードするのが警護の基本中の基本。警視庁は年に数回、公開訓練を行い、その様子は動画でも公開されています。そこでは銃声が“パンッ”と鳴ると、SPは条件反射のようにものすごい速さで移動し、警護対象者を覆うように守っています。残念ながら今回、公開されている訓練が身に付いていないことが証明されてしまいました」

    ■警備当局に人員を増やすよう打診していたが…

     都道府県警で要人警護を担当する警備部警護課勤務の警察官についても、

    「全員が全員ではないでしょうが、警視庁警護課で1年、研修することになっており、基本を学んでいないとは考えにくい。ですから、なぜ今回のような事態になったのか、まったく理解できないのです」(同)

     さらに言うなら、国のあり方についていまも積極的に発言し、支持者が多い一方で批判する人も多かった安倍元総理に対し、この警備体制でよかったのか、という問題もある。というのも、安倍事務所の関係者はこう話すのだ。

    「実は以前から、ベタ張りSPを2人に増やしてもらえないか、警備当局の関係者に内々に打診していたのです。安倍元総理はほかの総理経験者とくらべて、狙われる危険性が高いからですが、“いまのご時世、安倍さんだけ警備を手厚くするのは国民の理解が得られない”という回答でした」

     しかし狙われ、命を奪われてしまったいまとなっては、「国民の理解」という言葉も虚しいばかりである。

    ■「しかるべき立場の人間が辞めないと」

     さて、ここまで警護、警備が緩かった以上、責任問題に発展するのは避けられないだろう。奈良県警の鬼塚友章本部長は会見で、

    「警護、警備に問題があったことは否定できないと考えております」

     と言って謝罪したが、先の警察庁幹部OBは、「責任論が出てくるのは必至」だとして、こう語る。

    「直接的には奈良県警本部長に責任があります。大石吉彦警視総監は、SPを派遣しているとはいえ、指導責任があるとは言いづらいし、警察庁長官も同様です。しかし、政治的責任はありますから、しかるべき立場の誰かが辞めないと、世論におさまりがつかないでしょう」

     社会部デスクも言う。

    「元総理が殺されるという、最もあってはならない歴史的失態を引き起こした以上、警備体制の検証が終わったのちに、中村格(いたる)警察庁長官の進退問題が浮上するのは間違いありません」

     しかし、誰が責任を取ったところで、安倍元総理は帰ってこない。

    週刊新潮 2022年7月21日号掲載
    https://www.dailyshincho.jp/article/2022/07190559/?all=1

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