- なんでも
- パピヨン
- 22/05/05 15:47:55
2020年の年末、トイレで妻が倒れたんです」
そう振り返るのは関東在住の60代男性だ。
「その日は特に冷え込みが厳しく、妻は暖房をガンガンにかけた居間からトイレに駆け込みました。なかなか戻ってきませんでしたが、寒いなかトイレに行くのが面倒でずっとがまんしていたから時間がかかるのだろうと気に留めませんでした。
20分ほど経過して、さすがにおかしいと思ってトイレに行って声をかけても反応がなかった。慌てて扉をこじ開けると、妻が心臓を押さえて前のめりに倒れていました」
病院に救急搬送された妻は急性心筋梗塞と診断された。幸いにして一命は取り留めたが、いまも胸の痛みなどの後遺症に悩まされている。
◆排尿すると血圧が一気に下がる
新潟大学名誉教授の岡田正彦さんが言う。
「トイレ内では血流が急変するリスクがあります。それが生じると心臓や脳などに大きな負担がかかるのです」
その主な要因は「血圧の変化」である。排尿をがまんしていると、膀胱に尿がたまるとともに血圧が上昇する。その状態で排尿すると血圧が一気に下がり、上下変動の値は70~80mmHgに達するとされる。血圧が一気に下がると血流が減って脳に血が行き渡らず、ふらついて転倒するリスクが増大する。
これから寒さが一段と厳しくなると、60代男性の妻のようにトイレに立つことが億劫になり、尿意をがまんしがちなだけに気をつけたい。
◆女性の大敵「便秘」にも注意が必要
「高齢になると便秘になる人が多く、1回の排便量が多くなりがちです。急に大量の便を出すと、それまで腸周辺の血管を圧迫していたものが急になくなり、空っぽのお腹が真空ポンプのように血液を腹部に集めるようになります。
そのため脳にいく血液が一時的に減って、ふらつきが生じます。それは『排便ショック』といわれ、血圧のコントロールがうまくいかなくなった高齢者に多い現象で、高齢者施設のスタッフはトイレを危険な場所と認識しています」(岡田さん)
便秘の人は「いきみ」にも用心したい。排便時にいきむことで体が緊張状態になり、血圧が30~70mmHgほど急上昇する。いきみにより血圧が200mmHgを超えると、血管がプツリと切れ、脳出血などを発症する危険性が高まる。立つ、しゃがむといったトイレ特有の行為にもリスクがある。
- 0 いいね