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- 21/10/06 07:57:54
2020年、私はハーバード大学医学部アシスタントプロフェッサーの医師として、また三男をお腹に授かった妊婦として、コロナパンデミックを経験しました。2021年1月に妊娠中にmRNAワクチンを接種し、翌月元気な息子が生まれました。科学情報を吟味した上でのワクチン接種の決断でしたが、その判断がこれほどまで日本から注目を集めることになるとは全く予想もしていませんでした。
予想外の数のメディアからの取材を受け、コメントに対応するにあたり、私は「日本の女性ってこんなにも不等な扱いを受けているの?」という驚きを隠せずにいます。渡米してからの14年間、日本社会と密に関わったのはこれが初めてでした。【寄稿:内田舞・小児精神科医、ハーバード大学医学部アシスタントプロフェッサー、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長 / BuzzFeed Japan Medical】
私は世界でも初めてに近い段階で妊娠中にこのワクチンを接種させてもらった者として、この後に続く妊婦さんのためになる情報を提供したい思いが強くありました。
私の所属するMassachusetts General Hospital(マサチューセッツ総合病院、MGH、ハーバード大学医学部附属病院)では世界に対して医療情報を発信する部署があります。
その部署が、私が大きなお腹を抱えながらワクチンを接種したときの写真と、妊娠中に感染してしまった場合の重症化や早産のリスクを予防する意義、mRNAの性質を考えた上での安全性に関して私が書いた記事を公開したいと声をかけてくれ、私はその後、日米の取材に応じることとなりました。
その経験は反響の大きさも、反応も、日米で全く異なるものでした。
アメリカでの報道では、「接種のベネフィット(利益)がリスクを大きく上回る」と説明する産婦人科医のコメントと共に報じられ、「科学情報の解説と参考になる考察を語ってくれてありがとう」という感想をたくさんいただきました。
それとは対照的に、日本の報道の多くは視聴者の不安に同調することを優先している印象を受けました。
私が妊婦としてワクチンを接種した1月の時点では、日本ではなんとなく怖いワクチンなんじゃないかと漠然とした不安を抱えた方が多い時期でした。
ワクチンを打つと流産する、不妊になるという全くのデマが知識層にまで蔓延しており、報じるメディア記者も、そして医療者までもその誤情報に惑わされ、科学に基づく対応ができていないことがわかりました。
私は、妊婦に限らず、ワクチン接種の意義や、今わかっている情報とわかっていない情報を考慮して、接種するリスクと接種しないリスクを天秤にかける説明をしました。
お腹の中という見えない場所にいる赤ちゃんのことを一番に考えて悩んでいる妊婦さん達の不安は理解できます。「妊婦さんは接種するにしても、しないにしても、一人ひとりが科学情報を吟味した上で、自分の気持ちにしっくりくる判断をしてもらいたい」と語りました。
その結果、社会に対してはポジティブなインパクトの方がずっと大きかったのは明らかでした。
しかし、同時に少なくない量の誹謗中傷の言葉を受け、私自身へのインパクトに関してはこちらのネガティブな影響も無視できませんでした。
1へ続く
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