ウルテ
# ●舞台は1984年。 ●主人公は岡田亨さん。 30歳くらい。奥さんと二人暮らし。子供はいません。 ●岡田さんは、弁護士事務所に勤める、弁護士ではない雑用的な助手。 と、いう仕事をしていましたが、特段やりがいがある訳でも無くて、最近、辞めました。 ●今は無職。 奥さんが編集者として、どうやらそこそこ、収入のあるフルタイムの仕事をしています。 都内と思しき(小田急線と書いてあったような)場所に、親戚から安く借りた一軒家住まい。 ●割と料理や家事をまめにする男性らしく。 奥さんから 「そのまま主夫でもいいよ」 みたいなことを言われています。 ●何をしたいのか、何をするべきなのか。 割と、 「自分探し主夫」 状態。 ●そんな日々の中で。飼っていた猫が、居なくなった。 ●いたずら電話みたいな、エッチ電話みたいなのがかかってきた。 ●主夫として、あまり世間に接しない日常だった。 そんな中で、謎めいた事件が増えてくる。 ●近所に住む、高校生の女の子と、猫探しの中で、知り合いになる。 長期登校拒否中らしい。 そして、なんだか色々深刻そうな過去を持っている。 ●加納マルタ、加納クレタ、という、漫才コンビみたいな名前の姉妹。仕事上の名前、なのだけど。 猫の行方探しのヒントをくれる占い師みたいな。 このふたりとも、知り合う。 ●マルタ&クレタは、何だかカフカの小説みたいな、前提がよくワカラナイ意味深な会話をする。 それぞれ、やっぱり、深刻そうな過去がありそう。 ●主人公・岡田さんの、奥さんの縁戚にあたるのか。ノモンハン事件に従軍した老人男性がいる。 この人が、老いて死ぬ。 謎の遺書というか、形見を主人公に残して。 ##### みたいなことが、出来事としては起こります。 並行して、主人公の岡田さんが、来し方いにしえの想い出、自分のこと、妻のこと、などなどを思い出します。 はじめに。 否定的なことを書いておきますと。 ある意味、いつもの村上春樹さんっぽく、カッコつけていると言えば、カッコつけています。 相変わらず、 「美人とは言えないけど何かしら魅力的な女性」 がぽんぽん出てきます。 で、一人称小説ですから、岡田さん=「僕」と、 そういう女性たちが、なにかしら親しげになったり。 男女的な会話をしたりします。 相変わらず、 「彼は冷ややかだった。世界中の冷蔵庫の扉が開いたみたいだった」 というような、レイモンド・チャンドラーな感じの比喩に満ちた、気の利いた文章が並びます。 その上、登場人物たちが。 高校生の女子でも、謎の女でも。 ノモンハンを知っている老人までが。 同じような話法・教養・趣味で話します。 最終的なところで、男性である自己に甘いというか。 なんだかんだ一人称でスカしたようなことを言いながら、要するに新たに出会う女性たちと親密な関係を、特段がっついていないのに、作っていくという(笑)。 まあ、そのあたりはもう、割り切っている感じがします。 「相変わらず、面白いなあ」と、読めてしまう点ですが。少なくとも僕にとっては。 文章が、恐ろしく読み易く。 それは、安易でなまっちょろい訳でもないんですが。 風景描写とか説明描写を、非常に必要最低限に納めて。納めながら、それも客観的ではなく、主観的に何かしらか、大胆に読み易い書き方で。 主人公の心理、そして相手との対話を転がしながら。 上記のように、大した事件が起こる訳でもないのです。 なんだけど、日常の中で徐々に不穏が増していくサスペンスな感じが、良く出ています。 つまり、主人公・岡田さんにとっての、平和で幸せだった世界が少しづつ歪んでいく感じが、面白い。 この辺、例えれば、ロッセリーニの映画「不安」みたいに。 なんとも日常で大したことないのに、水が広がっていくような不気味な感じが、ぞくぞくします。 そのあたりは、実に技術的に優れているような気がします。 そして、相変わらずどこか、SFのような、夢幻小説のような、そんな香りと緊張感を漂わせながら、読ませていきます。
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No.1 主 ウルテ
21/10/05 00:12:37
こむ、こんな風になりそう
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