• No.1 友三角

    21/08/04 23:48:53

    橋本選手のSNSには「カネで金メダルを買った」というような中傷が寄せられているが、これは中国のさまざまな局面で腐敗や買収が常態化していることも関係しているだろう。

     習近平国家主席が就任後に「腐敗撲滅」に取り組んで喝采を浴びたが、裏を返せば、スポーツの世界を含めて、カネや人間関係で物事が左右されるという認識が国民の間で共有されていることを物語っている。

     また、卓球選手の中でも水谷、伊藤両選手だけが名指しで攻撃されているのは、2人がこれまでの日本人選手の枠を超えたからとも言える。水谷選手は以前、中国チームに不正があると言及し、伊藤選手はこの2、3年、中国選手を何度か破っていた。どちらも卓球王国にとってみれば面白いはずがない。
     中国語を流暢に話し、胡錦濤前国家主席と卓球をすることもあった福原愛さんは、日中友好のシンボルであり中国人にとって「妹」のような存在だったが、実力ではライバルと見なされていなかった。

     一方、伊藤選手が幼い頃、睡眠中に母から「中国に勝てる」とささやかれていたエピソードは中国でも有名であり、本人も「五輪で金を獲る」と公言し、それは夢物語ではなくなっていた。中国人目線で伊藤選手は時代劇や漫画のラスボスのように映ったのかもしれない。
    ■事態収拾の動きも道半ば

     SNSでの誹謗中傷は集団心理からか日増しに勢いを強め、それが一部の中国人によるものであったとしても、当事者にとっては耐えがたい状況になっている。「一部」ではあっても母数が14億人なので、量も膨大だ。

     さらに、自国のSNSで誹謗中傷しても気が済まない人たちが、自国のアクセスブロックを乗り越えて選手本人のTwitterやインスタグラムまで書き込みに行く。こうした行為は許されるはずはない。
     心を痛めているのは日本人選手本人にとどまらない。彼らと戦った中国人選手も今の状況に当惑しており、体操の肖選手は29日、自身のウェイボーで自身への応援に感謝しながら、「アスリートを過度に攻撃しないでほしい。スポーツ選手は皆すばらしく目標のために努力をし、自らを鼓舞している」と、自国民に自制を求めた。

     中国メディアでも、沈静化を図る記事が増えている。国営放送・中国中央電視台が運営するニュースアプリは30日、伊藤選手が中国のSNSで叩かれている事実を伝えたうえで、「伊藤選手は福原愛さんと同じように、中国選手とプライベートで親しくしている。孫選手ともおにぎりを分け合う仲だ」「伊藤選手は福原愛さんや石川佳純選手とは違い、自立心あふれ思ったことを言う性格だが、中国人からも愛される存在だ」と論評し、バッシングをいさめた。

    また、伊藤選手がTwitterで「水谷選手が言うように、中国選手の不正ラバー問題を何とかしないといけない。中国は勝つために何でもやる国だ」と発言したことを示す画像が中国で拡散し、水谷、伊藤両選手への誹謗中傷がさらに激しくなっているのに対し、言論メディアの観察者網は、「画像は日本の一般ユーザーが伊藤美誠のハッシュタグを付けてツイートしたもので、伊藤選手は無関係。拡散するな」と呼びかけた。

     観察者網は体操個人総合の採点問題についても、国際体操連盟(FIG)の解説や中国チームのコーチのコメント、橋本、肖両選手のSNSの投稿などを紹介し、冷静に受け止めるよう求めている。
     ただしこれらの記事に対しても、一部の人々が「選手たちがどうであれ、私は納得しない」「橋本選手のインスタにさらに書き込もう」と火に油を注ぎ続け、特定のスポーツメディアのSNSアカウントが、日本選手や日本チームを攻撃したり、ミスを喜ぶハッシュタグを使うため、そのたびに日本人選手やチームへの中傷の揺り戻しが起きている。

     日本でもSNSの誹謗中傷の深刻さが認識されたのは最近だ。自殺した木村花さん、あおり運転で加害者扱いされた無関係の女性など、取り返しのつかない被害が明るみになり、中傷された側の大変な労力によって、ルールが整備されつつある。
    ■中国は毅然とした対応を取るべきだ

     中国は半年後の冬季五輪のホスト国として、選手が競技に集中できるよう環境整備を先導する責任がある。少なくとも「橋本選手のインスタを狙え」といった投稿は削除するなりアカウントを凍結するなり、毅然とした対応を取るべきではないだろうか。

     また、日本人も、自国や海外チーム・選手を中傷する発言が機械翻訳などにかけられ、海外で炎上の要因になっていることも認識してほしい。伊藤選手のツイートとして拡散した投稿もフォロワー数が20にも満たないアカウントで、日本ではスルーされている。おそらく投稿者本人も、そこまで騒ぎになっているとは気づいていないだろう。

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