シマチョウ
私を「奥さん」と呼ばないで──呼称ハラスメント再考
作家の甘糟りり子氏が、「ハラスメント社会」について考察するシリーズ。今回は、「奥さん」、「お母さん」、「おばさん」…といった呼びかけや「嫁」呼称問題について語る。
少し前のこと、夜遅く、自宅近くの江ノ電の線路を越えたところで警官に止められた。一時停止無視だった。線路の前でブレーキを踏んで完全に速度ゼロにしなければならないのに、私は減速しただけで通ってしまった。
江ノ電が走っていない時間帯とはいえ、ルールを破った私が悪い。そこは反省します。
警官は警笛を吹きながら車を停止させ、こちらにやってきた。
「お母さん、今、ちゃんとブレーキ踏みました?」
「すみませんでした。で、お母さんって私のことですか? 私に子供はおりませんが」
警官の正確な年齢はわからないが、私の伝えたいことはなんとなくわかったらしかった。年齢で判断しようとしている私も差別をしている。これはよくない。
「ああ、それはすみませんでしたね。ええっと…」
警官が言葉に詰まったので、鞄から免許証を出して渡しながら、呼ばれる前につけ加えた。
「ちなみに、私、奥さんでもありませんので」
https://news.yahoo.co.jp/articles/dd622c180544d5bf42338336d9334c245cd83b41
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