• No.1 結城秀康

    20/08/03 07:15:25

    そうすると、国民全員PCRを毎日やらないといけなくなる。だが例えば国民全員PCRを毎日、2週間続けたとしても、今日陰性だった人が明日陽性になるかもしれず、その人は既に誰かにうつしているかもしれない。だから結局、国民全員PCRをやっても感染を制御できない。

    今われわれが考えているのは、いかにして感染している確率の高い人を選択的に検査していくかということ。軽症者も含めて感染している確率の高い人を見つけるということは非常に難しいが、例えばクラスターを形成した場にいた人たちは感染している確率の高い人ということになる。

    今その辺で歩いている人たちを、ちょっとPCRしませんかと、献血に協力してくださいというような形でやったとしても、これは感染している確率の非常に低い人たちに検査をするということになる。

    ──新宿区や新宿の保健所は、ホストクラブの関係者を広く濃厚接触者と見なし早期に検査する方法を取っている。これの評価を聞きたい。

    その方法は、ある程度感染している確率の高い人たちということになる。そのような人たちの間で陽性者を見つけることができれば、周りの感染連鎖を追うことができる。
    それがきちんとできたのが、2月に大阪のライブハウスで発生したクラスターだった。店名を公表して、感染リスクのある人たちの多くが名乗り出て、感染連鎖をほぼ突き止め、各県にまたがる全体像を浮き上がらせることができた。そうすることで、周辺の感染連鎖を断つことができた。

    いま東京では1日の新規感染者数が100人を超えているが、接客を伴う飲食店などで集団検診をやると、感染している確率が高い人たちなので陽性者が一気に増える。
    3月下旬には接客を伴う飲食店関連の感染者はほとんど見えていなかったが、今は検査への協力者が増えたことで見えてきているというのが、感染者数が増えていることの一因となっている。
    一方で、地域内外への感染連鎖の全体像が、ライブハウスで見えたようにはなかなか見えてこない。

    ──それは当然のことで、他人に明かしにくい秘密は誰しもある。信頼関係が築けない限り積極的に秘密を言いたがらない、ということだろう。

    まずその人たちに、検査を受けるインセンティブ(動機付け)を与えないといけない。
    今われわれに対して「歌舞伎町などのお店は閉めるべきだ」と言ってくる人がいるが、そこを閉めるとほかの繁華街にウイルスを拡散させてしまう可能性がある。感染リスクが高い人たちが別の地域に移動し、感染エリアが広がっていく。

    ──3密空間で飛沫が飛び散るというのが一番ハイリスクなのは間違いないとして、感染防止には人と人との距離を取れば十分と言えるのか。

    症状が出る前に感染させるケースがある以上、咳もくしゃみもしていない人たちが感染させていることになる。これまで考えてきたような飛沫感染ということでは説明できないような感染がかなりの程度で起きていると考えられるので、マスクを外して近距離で会話をするというような環境はできるだけ避けるべきだ。(以下略)

    [写真]日本のクラスター対策を主導してきた押谷(7月6日、都内) HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

    <2020年8月4日号「ルポ新宿歌舞伎町『夜の街』のリアル」特集より>
    https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/pcr-4_1.php

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