• No.2 宇喜多秀家

    20/07/17 09:14:39

     実際、地方の観光地は今、壊滅的な状況にある会社が多いのが実情です。そもそも訪日外国人によるインバウンド需要がほぼゼロになったうえに、県外からの観光客も激減しています。旅館や観光施設、土産物屋はそれでも休業するわけにいかず、一方で営業する以上は、従業員への給与、光熱費、銀行への返済までお金は出ていくばかりです。

     ここで需要喚起をするための支援がなければ、来年にかけて旅館やホテル、観光事業者の倒産や閉店が相次ぐことになります。Go Toキャンペーンは政府にとって、最重要政策だということになるのでしょう。

    ◆どんなに異論が出てもタイミングは今しかない理由

     しかしそれでも、「なぜ、このタイミングなのか」というのが、地方自治体の首長が抱える懸念です。そこに第三の理由として、タイミングが今しかないということが挙げられます。

     ここから先の話は、あくまで筆者の分析に基づく予測です。要するに、ここで一時的にコロナ感染の拡大を危惧してキャンペーン開始のタイミングを待ったとしても、新型コロナの感染者数が首都圏で再び収束する可能性は低いのです。

     5月25日に全国的に経済が再開した後、6月中旬に東京で新型コロナのクラスターが再発生したのが、いわゆる夜の街でした。この段階であれば、クラスターが判明していることから、封じ込めは可能だったのかもしれません。ただ、夜の街での感染は、濃厚接触者が名乗り出にくいということもあり、結果的には都内で感染は再び広まっていきました。

     足もとのデータを確認すると、7月14日の東京都の新規感染者143人のうち、夜の街関連は24人、新宿エリアの感染は14人といずれも少数です。圧倒的に多いのは感染経路不明者で、東京ではすでに、どこで誰が感染しているのかを把握することが不可能な状況に陥っています。

     これは、アメリカでコロナが収束しなかったときの状況に似ています。今の日本はクラスター対策だけでなく外出自粛策も行えない状況で、感染の状況を注視している状態なので、新規感染者数が減少傾向に向かう要素がないことになります。だとしたら、「新型コロナが落ち着くまでしばらく様子を見よう」という条件を認めてしまうと、このまま感染者数が減らないまま、夏の旅行需要期が過ぎてしまうことになります。

    ◆「冬が来る前に……」政府が決して口にできない本音

     そして、政府が口にすることは決してないと思いますが、現在の再流行では重症率が低く、死者数は4月頃と比較して極めて小さい状況にあるのが現実です。しかし冬に入れば、再び死者数が増加するでしょう(これは、ブラジルなど南半球の現状からの推論です)。逆に言えば、冬がくる前にGo Toキャンペーンを終了させなければいけないわけです。

     ここまでの3つの理由を考慮すれば、Go Toキャンペーンをそれでも止めるわけにはいかないということになるわけです。東京都を除外してでもまだキャンペーンを貫く意義は、私ではなく政権が繰り返し口にしていることからも、明らかではありますが――。
    (百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

    ダイヤモンドオンライン
    https://diamond.jp/articles/-/243332

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