• No.2 元弘

    20/02/22 14:01:51

    >>1‘03年4月に岩倉市立岩倉中学に転向するが、授業を受けている最中に突然パニック状態に陥り「みんながしねって言っている」と叫ぶなどの異変が現れた。市邨中学時代のいじめの光景がフラッシュバックして身体が動かなくなるなどの症状が美桜子さんを襲い始めたのだ。心療内科に通いPTSDと診断されてクスリを常用するようになったが症状は改善せず、2学期からは不登校になった。’04年2月には外国籍や帰国子女だけを受け入れている中高一貫校の南山国際中学校に転向するが、その後も多重人格が現れる解離性同一性障害などを発症させ自殺未遂を繰り返すようになる。そして過去の記憶に耐えかね、’06年8月に16歳の短い生涯を終えてしまったのである。

    美桜子さんは、小学校3年から児童劇団に所属し女優を目指していた。’06年8月12日と13日に名古屋の芸術文化センターで行われた、夏季講演「銀河鉄道999」の赤ゲラ役が最後の舞台となった。自殺する5日前のことだった。

  • No.3 元弘

    20/02/22 14:04:45

    >>2◆調査依頼を何度も拒否した学校

    〈市ムラのやつなんかにはまけないゾ!! 〇〇〇〇(生徒名)、〇〇〇〇(生徒名)……最後に××××(教師名)!! おぼえとけ! お前なんかギタ×2にしてやる〉

    美桜子さんが中学2年の時、テスト勉強のノートの表紙に書つけた8名のいじめ加害者と担任の実名だ。典子さんは娘の遺品整理をしていて見つけたこのノートから、娘の自殺は市邨中学時代のいじめが原因と確信する。典子さんは娘の死の真相究明を始めるが、学校の対応は呆れるばかりだった。

    「学校にいじめの実態調査を何度も求めましたが、拒否され続けました。それどころか、『線香を上げに行けば学校がいじめを認めたことになる』と一切の謝罪を拒否され、話し合いは平行線を辿りました」

    自殺の民亊訴訟の時効が迫り切羽詰った典子さんは時効直前の’09年8月11日、市邨学園、理事長、校長、担任、そして加害生徒8名と保護者15名に対し、損害賠償を請求する民事訴訟を名古屋地裁に起こした。

    典子さんが訴えた裁判は、いじめが4年も前に遡るため事実認定が困難を極めると思われた。だが裁判では加害者の実名の遺書があり、専門医による美桜子さんの診断書や証言。また、何度も担任を始め学校にいじめの相談をしている事実など、母が集めた数多くの証拠が判決に功を奏した。

    ’11年5月20日、名古屋地裁はいじめの事実、自殺との因果関係や自殺予見可能性があったとして学校の責任を認めた判決を下した。また、加害生徒と保護者とは裁判の終盤ですでに金銭による和解が成立していた。

    ところが、学校側は敗訴判決を不服として即日、名古屋高等裁判所に控訴してきたのである(’12年12月、高裁は学校側に不法行為があり、いじめを放置していたとし、PTSDの因果関係を認めた)。市邨中学校をはじめ、名古屋経済大学など幼稚園から大学院までを経営するグループの責任者・末岡熙章理事長の自宅を尋ねた。理事長は、玄関で辟易したような顔でこう答えた。

    「(美桜子さんは)うちの生徒ではなくなっているし、(加害)生徒たちはいじめではないと証言していますから謝罪といわれてもね。いじめというよりいたずらです。(一審)判決が(いじめを)認め敗訴してもわたしたちとしては(いじめは)なかったとしかいえない」

    あくまで理事長はいじめがあったことを認めず、頑なに学校に非はないと繰り返すのだ。

    南山国際高校1年の時美桜子さんは、中学時代に受けたいじめを振り返り「自分との戦い」と題する作文を書いている。

    〈いじめを受けた人は深い心の傷を負い、いじめを思い出しては何年も苦しむのです。(中略)何故昨日まで仲良くしていた友達がそんな事をするのか。裏切られた気持ちと自分のみに何が起こっているのかが分からない気持ちでいっぱいになりました。そして、いじめはどんどんエスカレートしていきました〉

    この作文を書いた1年後に、美桜子さんは自らの命を絶ったのだ。生きたいという強い思いが作文の最後にこうした文字で綴られていても、学校はいじめを認めようとはしない。

    〈いじめは人の心を殺します。絶対にあってはいけないものです。この世からいじめがなくなる事を私は一生願い続けます。(中略)私達一人一人がいじめの悲惨さについて考え、いじめを絶対に許してはならないと強い気持ちで立ち向かうこと、それがまず第一歩だと思います。もしあなたがいじめに遭遇したら見てみぬふりをしないで下さい〉

    文部科学省は8月31日、いじめ対策等総合推進事業を来年度から実施する方針を決めた。臨床心理の資格を持つスクールカウンセラーの増員や外部人材による相談窓口の整備、教員の研修が柱だという。だがそれだけではいじめはなくならない。いじめはいまも全国の学校で広がり続けている。加害者や学校が「ただのいたずら」という安易な意識がぬぐえない限り、いじめの被害者は後を絶たない。

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