「〈ペリカン〉
子どもたちを巣に残して、ペリカンのお父さんは、餌を探しに出かけました。
その留守に……。ヘビだ！ 毒ヘビが、子どもたちをかみ殺してしまったのです。
帰ってきたペリカンのお父さんは、なんと悲しい場面を見たことでしょう！
お父さんは、声をあげて泣きました。
森の動物たちも、みんな泣きました。
「子どもたちは、死んでしまった。わしも、わしも死ぬぞ！」
ペリカンのお父さんは、大きな嘴を、じぶんの胸深く突き刺しました。
真っ赤な血が、子どもたちの白い体の上に、夕日のように降り注ぎました。
すると……。奇跡です！
お父さんの血を浴びて、子どもたちが生き返ったのです。
素晴らしい愛の力！
お父さんは、嬉しそうに子どもたちの顔を見つめました。
でも、お父さんは死ぬのです。
ああ、お父さん、お父さん。
死なないで……！」

レオナルド・ダ・ヴィンチ 作
西村暢夫、渡辺和雄 訳

(わたくし・白には、「お父さん」が、意図することなく、子らを再生させることになった、その道行きにこそ、貴さが感ぜられるのです。)