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- 建長
- 20/01/22 00:53:36
服役中の元暴力団組員が目指したのは、合格率約3%の司法書士だった-。
岡山市の甲村柳市さん(47)は2018年11月7回目の受験で司法書士試験に合格した。刑務所で勉強を始め、足かけ八年。事務所の改装工事も完了し、年明けから司法書士としての活動が本格的に始まった「経歴を伏せず、幅広く仕事をしたい」と意気込む。
「ヤクザ、してみいひんか」。20代前半行きつけの岡山県内のスナックで知り合った男性から声を掛けられ、指定暴力団山口組の三次団体の組員に。電話番や組長のボディーガードも経験し、刑務所に三回服役した。
暴力団組員を辞めた後は大阪で飲食店を経営したがうまくいかず、財産を使い果たして岡山に戻った。その後、公務執行妨害事件を起こし、四回目の服役。広島刑務所にいた10年冬、40歳を目前に自分を見つめ直した。
最終学歴は中学卒。「この時間をマイナスに使いたくない」と資格取得を思い立ち、学歴や年齢に関係なく、前科があっても受験できる司法書士を目指した。
刑務所では勉強に集中するため、わざと独居房に入り、民法の条文を小さな文字でびっしり書き込んだ便箋をカレンダーの裏に隠した。
刑務官に見つからないよう、ご飯粒を付けて壁に貼り、あぐらをかいて一字一句暗記雑居房でも刑務作業の傍ら、問題集を解いては暗記することを繰り返した。
11年に出所してから、多い日は1日に12時間勉強した。
「受かるわけがない」と周りから言われ続けたが、12年に行政書士に一発合格し、自信をつけた。
挑戦を重ねるうちに周囲から応援されるように。組員時代になじみのなかった会社法などには苦労したが、信念を曲げずに挑み続けた。 事務所を法人化して新しいスタッフも迎え入れた。改修した事務所の壁には大理石調のタイルが光る。
「人の権利を守る仕事。常に知識を蓄えないと」と日々の勉強も欠かさない。
「経験を生かし、頼れる司法書士を目指したい」。そう話す口調は優しかった。
2020年1月21日 夕刊 www.tokyo-np.co.jp
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