- ニュース全般
- 天長
- 20/01/17 07:25:36
札幌市で実習中のベトナム人技能実習生が2019年9月、脳出血で倒れて意識不明の状態となり、入院を余儀なくされている。20年3月の在留資格の期限が切れると不法残留となって原則は母国に送還されるが、札幌出入国在留管理局によると、回復見込みのない意識不明の実習生は「想定外」で、対応に苦慮している。家族は日本での治療継続を希望し、支援団体も「日本人と命の差別はない」として国や自治体に対応を求めている。
札幌市内の病院の一室で19年12月14日、ベトナム人技能実習生のズオン・ゴツク・トゥさん(19)の名前を、兄のトゥアンさん(29)が呼び続けていた。トゥさんは人工呼吸器をつけ、鼻からチューブで栄養を取る。意識はないが、呼びかけに目を開いたように見えた。「少し、反応が良くなった」。わずかな変化にも希望を見いだそうとしている。
トゥさんは19年3月、1年間の技能実習の在留資格で来日した。札幌市西区の建設会社で働いていた9月17日、現場で頭痛を訴えて救急車で運ばれた。脳出血で手術を受けたが、「意識の回復は難しい」と診断された。
実習生の在留資格は本人の意思で最大5年まで延長でき、期限内は日本人と同様、国民保険や生活保護が適用される。一方、在留資格が切れると不法残留となって入管施設に収容され、母国に送還される。トゥさんの場合、人工呼吸器をつけているため収容・送還は難しいが、現在の医療費や生活費を賄っている実習生保険は3月で切れる。このため、札幌入管は「個別の事情を鑑みて最良の方法を検討したい」と言う。
外国人の生活支援などをしている「移住者と連帯する全国ネットワーク」によると、不法残留で収容された外国人が重い病気にかかった場合、国民健康保険を適用して治療を受けさせる在留許可「療養する活動」で対応するケースが多い。ただ、生活保護を申請できない可能性が高く、医療費の自己負担分や生活費のめどが立たないといった問題を抱える。
支援団体、札幌市、入管、会社などは19年の暮れから、在留資格の変更や、生活保護や後見人の申請の可否など支援のあり方を話し合っているが、本格的な議論はこれからだ。
トゥさんは「家族の暮らしを少しでも楽に。いずれ自立したい」と日本行きを決めたという。来日後は毎日のように両親に電話をかけ、「体を大切にするように」と繰り返していた。トゥアンさんは「少しでも元気になって、両親に会わせたい」と願う。
トゥさんが教会に通っていた関係で支援するカトリック札幌司教区・難民移住移動者委員会の西千津さん(55)は「受け入れているのは労働力ではなく人権を持った人。いろいろなケースが起こると認識し、日本人と命の差別のない受け入れ態勢を整えていく必要がある」と訴える。【山下智恵】
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6348336
- 0 いいね