• No.1 文政

    19/10/14 14:30:40

    ■愛着不形成が起こすさまざまな問題

     ところが、養育者が子どもの情動に対して適切に対応していない場合、子どもは養育者の気まぐれな行動から生じる自分自身の混乱や苦痛のほうにより注意が向いてしまい、相手の心の状態を読み取ることにも困難が生じます。

     子どもにとって、最初の人間関係である養育者との関係性のあり方は、その後の人間関係のテンプレートになります。その結果、養育者との安定した愛着を形成できた子どもは、その後も相手の心をきちんと理解し、相手への信頼や、自尊心(自分への適切な自信)を持ち、安定した人間関係を作っていけるのです。

     逆に、人の感情が理解できなかったり、自信の無さから見捨てられる不安が強くなったりして、試し行動などを頻繁にしてしまう人は、幼児期における不安定な愛着形成と関連があることも明らかになっています。ただし、そのような場合でも、親元を離れ、特定の異性と関わっていく中で、愛着が安定してくることがあることも報告されています。

    ■幼少期の親子関係が、「やりきる力」にも影響する

     おそろしいことに、幼少期の親(主に接触時間が長い母親との報告が多い)との愛着関係が与える影響は、その後の人間関係だけではありません。中学生になったときに、「自分の能力を伸ばそうと難しいことに挑戦・努力して目標を達成することや、何か新しいことを習得するようなチャレンジ力にも大きな影響を及ぼします。

     不安なときや困ったときには助けてくれる、そんな親への安心感・信頼感があって初めて子どもは新しいことにチャレンジできるのです。私の研究からも、目標に向かって努力をする学生は、頑張るほどに不安が高くなる傾向が示されており、頑張り続けるためには安全地帯があることが重要になってくるのでしょう。

     さらに、親への安心感や信頼感が低い子は、不登校になる傾向が高く、学校生活における規則やルールを守ることができないなどの問題行動が多いことや10代での妊娠、薬物使用などが多いことも明らかになっています。また、自己制御力が弱く青年期に暴力的になる(いじめ加害者になる)ということも報告されています。

    ■「いじめ」加害者になる子の特徴

     中学生におけるいじめ加害の要因を検討した結果、男女共にいじめ加害の経験をした子は、いじめ加害を経験していない子に比べて、有意に親への愛着得点が低く、学校全体への不満感と抑うつ傾向が高いことが報告されています。

     いじめの中でも、ネットいじめの加害を行う子は、そうでない子に比べて、「親が自分の携帯電話、インターネットなどの利用状況に対する把握が低い」と考えている傾向が高く、ネットいじめと実際のいじめ両方を行う子どもでは、親への信頼感や親との情動的な繋がり度合いが有意に低いことが報告されています。

    ■愛着不形成がもたらす脳の異常

     愛着がうまく形成できないことは、脳の発達にも影響することがわかっています。愛着が不安定で見捨てられ不安が高い人では、帯状回や側頭葉と呼ばれる場所の発達度合いが小さいと報告されています。また、幼少期に虐待などを経験した人でも、帯状回と海馬が小さくなっていることが報告されています。海馬や帯状回が小さくなっている状態は、戦争から帰還したPTSDを抱える兵士でも観測されています。

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