- なんでも
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■たったひとりで闘病生活を送っていた
初期の日記には、彼女の闘病への決意が綴(つづ)られていた。
『病気を乗り越えて、人のためになれるようなボランティア活動をしていきたい。そして、幸せな家庭を築きたい』
しかし、その思いは日を追うごとにトーンダウンしていく。
『もっと私が元気だったら……生まれ変わったら、今度は、結婚したい』
さゆりさんのあまりにはかない、そしてささやかな願い──。しかし、それはかなうことはなかった。
そして、亡くなる1か月前には、自らの病への苦しみや戸惑いを記したものが多くなっていく。
『お腹が痛くて、下痢が止まらず、身動きがとれない……。これからの自分は、どうなってしまうのだろう……』
日記は死亡推定日時の4日前で途絶えていた。
『今日は、お腹が痛くて、あまりよく寝れなかった。倦怠感もひどい……』
それは、さゆりさんが力を振り絞ってしたためた最後の文章だった。さゆりさんは、病気のことを誰にも告げずたったひとりで闘病し、最後はトイレの中で崩れ落ちるように息絶えていた。
直接の死因はトイレで排便中にいきんだことによる、急死。しかし、誰も頼る人がいないという状況が彼女をむしばみ、死期を早めたのは明らかだ。
■死後3か月発見されず
さゆりさんの遺体が見つかったのは、真夏を過ぎて、秋に差しかかったころだった。
2階の窓から、大量のハエが見えることを心配した近所の住民が、警察に通報して孤独死が発覚。死後3か月が経過していた。ひと夏を過ぎたさゆりさんの体液は、トイレと脱衣所の床一面に染み渡り、大量のウジとハエが発生していた。さらに体液はクッションフロアをとうに突き抜けて、ベニヤや断熱材、建物の基礎部分まで浸透していた。遺体が長期間発見されなかった場合、このように、建物の深部まで体液が浸透するケースも多いのだという。
塩田氏は、さゆりさんの死について、無念な思いを語る。
「さゆりさんが愛していた彼氏と一緒に人生を歩めなかったこと、肉親を頼れなかったことが、病気だけでなく、彼女の精神をむしばみ、死を早めてしまったんだと思います。
さゆりさんは、40代という若年層ということもあり、地域包括支援センターなどの見守りの対象者ではない。また、戸建て住宅は、賃貸物件と違いプライバシーの問題で、近隣の住民が立ち寄らないことも多い。それがなおさらご遺体の発見を遅くしたんだと思います。ご本人の孤独な境涯が死を早めるんです。心を閉ざして、人生さえ早く幕を閉ざしてしまう。本当に切ないです」
現在、この住宅はリフォームされ、別の住人が住んでいるという。
>>2に続く- 0
19/05/22 18:59:21