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- 横手やきそば
- 17/07/03 12:21:16
京都新聞
京都府内の精神科病院で勤務した3年間の経験を基に、精神科医の東徹さん(37)=京都市下京区=が著書「精神科病院で人生を終えるということ」(日経BP社)を出版した。長期間にわたり同病院で暮らした人々の最期を描き、終末期医療やほかの診療科からの偏見という課題を浮かび上がらせた。東さんは「長く入院して亡くなる人のさみしさを知ってほしい。社会全体で受け入れるきっかけになれば」と話す。
13人のエピソードを紹介する。個人が特定されないように、内容を一定、脚色している。
80歳で亡くなるまで50年以上、統合失調症で入院した男性は、最後の3年間を東さんが担当。既に寝たきりで家族との交流も絶えていた。肺炎を起こし病状が悪化したが、「当院が家みたいなもの」と転院させずにみとった。その後、男性の若い頃の写真が見つかった。院内のベンチに男性らが並び、満面の笑みを浮かべている。「この写真ぐらいの状態ならなんとか、退院できるのではないか」。社会復帰できなかった男性を思い、精神医療の闇の深さを感じたとつづる。
このほか重症肺炎の統合失調症の男性を設備の整った病院に転院させようとした際、不自然な理由で断られた経験から、ほかの診療科が精神科の患者を避ける「差別」を指摘。別の同症の男性に脳腫瘍が見つかった時、男性の弟が、手術を断りながら胃ろうの処置を受けることには同意したというエピソードでは、家族にしか分からない終末期医療の判断に思いを巡らせた。
特別編として、昨年7月の相模原殺傷事件に関する論考も掲載。被告に精神疾患の影響があった可能性を指摘した上で、「精神疾患を持った者は社会から排除すべき」という考えに警鐘を鳴らしている。257ページ。3780円。
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