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駅から花束を抱えた人が歩いてきた
わたしは電車好きの息子とホームに入ってきた電車を見ながら視線の端で彼女のことを見ていた
今日も花を抱えている
一昨日も先週も花を抱えていた

よほど、花が好きな人かしら？
と思いながら息子が話す電車の特徴に適当に相づちを返していると彼女が私たちの前で足を止めた

言葉も交わさずにチラリと息子をみた彼女は何事もなかったようにどこか目的の場所に行ってしまう
何故だろう
あの人は何故 息子を見たのか…

それからしばらく雨が続き、駅に行くことがなく季節が変わろうとする中で駅ではない場所で彼女を見かけた

うちの子、電車が好きで…サプライズプレゼントを用意したいけどどれがいいか教えてくれる？
おもちゃ売り場で会った彼女は晴れやかな表情で話しかけてきた
息子は戸惑いながらも小さなおもちゃを彼女に渡した

あの人にも子どもがいるのか…
でも年は50ぐらいなのにそんな小さな子がいるのかな
と不思議に思っていながら帰路につくとわたしたちを追い越して何台も何台もけたたましいサイレンを鳴らしながら緊急車両が走っていく

電車と同じぐらいに緊急車両が好きな息子は自転車の幼児椅子の中で興奮気味に叫んでいた

自宅に前の道に規制線が張られ、物々しい雰囲気の中で自宅の無事を確認すると後ろから


あらっ、残念ね
あなたたち無事だったの
せっかく、花を手向ける場所が増えると思ったのに

と声がして振り向くと花を抱えた彼女がいた