通州事件って知ってる? へのコメント(No.34

  • No.34

    14/08/02 20:13:53

    婆さんは懸命に逃げようとしていたので頭に斬りつけることが出来ず、左の腕が肩近くのところからポロリと切り落とされました。

    お婆さんは仰向けに倒れました。
    学生はこのお婆さんの腹と胸とを一刺しづつ突いてそこを立ち去りました。

    誰も見ていません。
    私とTさんとこのお婆さんだけだったので、私がこのお婆さんのところに行って額にそっと手を当てるとお婆さんがそっと目を開きました。

    そして、「くやしい」と申すのです。
    「かたきをとって」とも言うのです。

    私は何も言葉は出さずにお婆さんの額に手を当ててやっておりました。
    「いちぞう、いちぞう」
    と人の名を呼びます。

    きっと息子さんかお孫さんに違いありません。
    私は何もしてやれないので只黙って額に手を当ててやっているばかりでした。

    するとこのお婆さんが「なんまんだぶ」と一声お念仏を称えたのです。
    そして息が止まったのです。

    私が西本願寺の別府の別院におまいりするようになったのはやはりあのお婆さんの最期の一声である「なんまんだぶ」の言葉が私の耳にこびりついて離れなかったからでしょう。

    そうしてお婆さんの額に手を当てていると、すぐ近くで何かワイワイ騒いでいる声が聞こえて来ます。

    Tさんが私の身体を抱きかかえるようにしてそちらの方に行きました。

    すると支那人も沢山集まっているようですが、保安隊の兵隊と学生も全部で十名ぐらい集まっているのです。

    そこに保安隊でない国民政府軍の兵隊も何名かいました。
    それがみんなで集まっているのは女の人を一人連れ出して来ているのです。

    何とその女の人はお腹が大きいのです。
    七ヶ月か八ヶ月と思われる大きなお腹をしているのです。

    学生と保安隊の兵隊、それに国民政府軍の正規の兵隊達が何かガヤガヤと言っていましたが、家の入り口のすぐ側のところに女の人を連れて行きました。

    この女の人は何もしゃべれないのです。
    恐らく恐怖のために口がきけなくなっていることだろうと思うのですが、その恐怖のために恐れおののいている女の人を見ると、女の私ですら綺麗だなあと思いました。

    ところが一人の学生がこの女の人の着ているものを剥ぎ取ろうとしたら、この女の人が頑強に抵抗するのです。
    歯をしっかり食いしばっていやいやを続けているのです。

    学生が二つか三つかこの女の人の頬を殴りつけたのですが、この女の人は頑強に抵抗を続けていました。
    そしてときどき「ヒーッ」と泣き声を出すのです。

    兵隊と学生達は又集まって話し合いをしております。
    妊娠をしている女の人にあんまり乱暴なことはするなという気運が、ここに集まっている支那人達の間にも拡がっておりました。

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