• No.1 にゅうめん

    26/07/15 09:22:12

    生徒は転ばずに済んだ。

     B先生はそのまま保健室まで付き添い、引き継ぎも済ませた。

     彼は、それでこの件は終わったと思っていた。

     だが終わらなかった。その日のうちに、保護者から学校へ強い抗議が入ったのである。

    「男の先生が娘の体に触れた」

    「大きな声で怒鳴られた」

    「体調が悪い子に対する配慮がまるでない」

     その面談を、教頭である私が受けることになった。

    ◆保護者からの不満

     翌日、応接室に現れた母親は、最初から怒っていた。椅子に座るなり、挨拶もそこそこに言った。

    「先生方は、娘がどれほど傷ついたか、分かっていらっしゃるんでしょうか」

     私は深く一礼し、慎重に言葉を選んだ。

    「このたびは、お嬢さんの体調不良時の対応でご心配をおかけし、申し訳ありません。
     まず事実関係をご説明いたします」

    「それで?」

    「担当したB先生から詳しく聞いております。お嬢さんを保健室へお連れする際、当初は不用意に接触しないよう配慮し、距離を保ちながら付き添っていました。ただ、階段でお嬢さんがふらつかれたため、転倒を防ぐためにとっさに肩を支えたとのことです」

    「でも、触ったんですよね」

     母親は間髪を容れずに言った。

    「はい。ですが、転落を防ぐための対応で―― 」

    「男性の先生が女子生徒に触れるなんて、あってはならないことです」

    続く

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