「重度判定」が壊した娘の心は、取り戻せますか？

私の娘Ａ子には、幼い子どもがいます。
その子が３歳の頃、保健師さんから「一度療育を受けてみませんか」と勧められ、娘は軽い気持ちで通い始めました。
「何か分かるといいな」「様子を見てみよう」そんな程度の気持ちだったようです。
ところが、療育を続ける中で病院でも診断を受けることになり、結果は自閉症。
さらに児童相談所で知能検査を受けたところ、重度知的障害と判定されました。
その知らせを受けた娘は、言葉を失い、しばらく立ち直れなかったようです。
娘は「お母さん療育ついてきて」というようになり、何回か付き添ったことがありました。
その頃から、同じ療育に通う軽度知的障害のお子さんを持つお母さん※仮にＢさんとします※に対して、娘は複雑な感情を抱くようになりました。Ｂさんは明るく前向きな人で「うちはうち。気にしても仕方ないよ」と笑って話すタイプ。私からみると、表向き明るく、人前では苦労を見せないようにしている人かもしれません。けれどその態度や言葉が、当時の娘にはどうしても受け入れられなかったのだと思います。
Ｂさんが気軽に話しかけてきたり、子どものちょっとした失敗を笑いながら受け止める姿を見るたびに、娘は苛立ち、心がざわついていたようです。
やがて娘は、Ｂさんと距離を取り、周囲に愚痴をこぼしたり、先生にＢさんのことを細かく報告するようになっていきました。
それは、誰かを傷つけたいというよりも、「どうして自分だけ」と思う気持ちが抑えきれず、怒りや悲しみの矛先を探していたのだと思います。　私はそんな娘を見て、胸が痛み、付き添うのをやめました。
ＢさんもＢさんのお子さんも何も悪くない。けれど、娘の中では「重度」という現実を受け止めきれず、誰かを憎むことでしか心を保てなかったのでしょう。
母親として、どう寄り添えばいいのか今も迷います。ただ一つ言えるのは、娘があの苦しみを越えられる日が来ることを信じて、静かに見守るしかないということ。

娘がもう一度、誰かと穏やかに笑える日は来るのでしょうか？