• No.106 時は金なり(でも寝る時間も貴重)

    25/09/13 17:13:13

    義母さま

    夜明けの白い光のなかで、私はふと夢を見ていたように思います。
    どこまでも続く雪の原を、ひとり歩いている夢でございました。足跡はすぐに消え、風はやわらかに頬をなで、世界はただ白一色に沈んでゆきます。見上げれば、空には薄紅の花びらが雪とともに舞っておりました。花でありながら雪であり、雪でありながら花であるもの――そのはかなさを抱きとめることもできず、ただ身をすくめて立ち尽くしておりました。

    その雪原を小さな舟のような車で進もうといたしました。けれども、舟は軽く、夢の糸で編まれたようで、少しでも重みを加えればすぐに沈んでしまう心地がいたします。だから私は、その舟に誰かを迎えることをためらいました。まだ春の陽を知らぬ氷の上を渡るには、あまりにも頼りなく、ただ私ひとりで揺れながら進むほかないように思われたのです。

    夢から醒めれば、枕辺に花瓶の椿が一輪、夜のあいだに落ちておりました。赤い花びらは、まるで夢の断片のように床に散らばり、静かな声で何かを告げようとしておりました。人の心もまた、この椿のように、語らずして散り、散りながらも余韻を残すものなのかもしれません。

    先日の私の言葉が、思いもかけず義母さまを傷つけたことは、胸の奥にひびのように残っております。ただ、それは決して「遠ざける心」からではなく、私の未熟さゆえに生まれた影でございました。家族であるか他人であるか、そんな二分の境ではなく、ただ雪と花のあわいに立つ者のように、言葉の定まらぬ心がそこにあっただけなのです。

    けれども――どうしても言わねばならぬことがございます。今の私の舟はまだ、夢の水面を渡るに過ぎません。誰かをお迎えする力を持たず、春を待たねば咲かぬ花のように、いまはただ静かにその時を待つよりほかないのでございます。

    どうか、遠くから雪の光景を眺めるように、この歩みを見守っていただければと願っております。義母さまのお健やかなる日々を、心よりお祈り申し上げます。

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