- 病気・健康
- ロイヤルウエディング
- 23/10/24 18:58:24
意思に反して大きく体を動かしたり、突然声を出したりしてしまう神経疾患「トゥレット症」に苦しむ人たちがいる。
症状が出ないよう我慢し続けることは難しく、好奇の目で見られたり、心ない言葉を浴びせられたりすることもある。当事者の中には、公共交通機関の利用をためらう人がいる。周囲の理解を得られず、職場を追われた人もいる。制御しきれない症状に悩みながら、社会との関わりを模索し続ける若者たち。生きづらさを抱えてどう生きるか――。(加藤雅浩)
買い物もままならない生活 卑わいな言葉も口に
多くの買い物客でにぎわう都内の商店街。八百屋で野菜を次々とかごに入れていく小田中太一さん(27)から急に「あっ」と大きな声が出た。周囲の客は驚いた様子で顔を上げ、小田中さんの方を見る。小走りでその場を離れる人もいた。「意思とは関係なく出てしまう。周りの人には不審者だと思われてしまうし、とにかく生きづらいです」
いくつもある症状の中で、特に悩んでいるのが卑わいな言葉や挑発的な言葉を口にしてしまう「汚言症」。東京大学医学部付属病院の金生(かのう)由紀子医師によると、汚言症は「強迫的・衝動的な色彩が強い」といい、言ってはいけない言葉ほど言いたくなってしまうのが特徴だ。
具体的には「死○」や「うんこ」などと声に出してしまう。小田中さんの場合、女性器の名称も口にしてしまうため、「女性の視線がとにかく痛くて。人に見られるのが何よりも嫌でした」。喫茶店で通報され、警察沙汰になったこともある。場合によっては、口にした本人が気づいていないこともあり、周囲から理解されにくいのが現状だ。
(略)
小田中さんがトゥレット症と診断されたのは、小学校3年生の頃。「おっ、おっ」と声を出したり、肩を動かしたりする症状が表れた。心配した母親(57)が同級生の親に相談すると、こうした症状は「チック」だと教えられた。医師から病状の説明を受けても、父親(61)は「どうしても信じられなかった。親でも受け入れられなかった」という。
小田中さんには、激しくまばたきをしたり、自分の腹部をたたいたりする症状もあった。親から病気のことを教えられても、当時は理解できなかったという。中学に上がってようやく「誰もこんな声は出していない。人とはちょっと違うな」と気づいた。「嫌われるかな。見下されたらどうしよう」と不安になった。想像していた通りになった。中学卒業を前に、汚言症が表れ始めた。
車両の連結部で叫び続けた高校時代
高校時代は苦しかった。入学式で卑わいな言葉を口にし、周りから避けられた。「うんこ」と言ってしまいそうになると、直前に「ふんが」と言い換えてごまかした。「ふんが先輩」とあだ名が付いた。上級生や下級生からもそう呼ばれるようになった。症状をまねされるのも苦痛だった。「いじめかどうかはわかりませんが……」。思わず手を出しそうになったこともある。
とりわけ苦しかったのは通学時間。電車がホームに着くと、真っ先に車両の連結部へ移動し、両方のドアを閉めて密室を作った。ここなら声もあまり漏れない。手が動いてもドアをたたくだけだ。肘の内側に口をあて、「うんこ、うんこ、死○、死○」と叫び続けた。その間も、体は勝手に動き続けた。「ひとりでいると楽だけど、ひとりでいるのはつらかった。なんで自分だけこんなところに」。ドアのガラス越しに広がる乗客たちの「日常」がまぶしく見えた。
連結部で叫び続けると、そこで1日の体力を使い切った。めまいを起こし、駅の事務室で休ませてもらったことも一度や二度ではない。授業中は疲れ切って寝てしまうことも少なくなかった。いらだち、悲しみ、やるせなさ――。行き場のない複雑な感情を抱えながら、「地獄の10分間」(小田中さん)を耐え続けた。
両親は後になって、学校から通学の様子を聞かされた。事情を知らなかった父親は、「そんなときに自分は『学校行けよ、学校行け』と言っていた。随分つらい思いをしたんだろう」と悔やんだ。「頑張っていたんだな……」と、母親は泣いた。
10/24(火) 17:06 読売新聞オンライン
全文はソースで
https://news.yahoo.co.jp/articles/81159bb84551953215b19123bd81b6668fa5f0ff
- 0 いいね