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- 22/02/14 16:55:03
長男と長女は成人し、女優として活動していた55歳のころ、腸閉塞(へいそく)を何度も繰り返した。腹部がカチカチに硬くなって激しい腹痛や発熱に襲われる。救急車を呼び、1週間入院して絶食したこともあった。子宮頸(けい)がんと胃のGIST(消化管間質腫瘍)の手術を受けていたので、腹部には癒着した場所もあり、なかなか原因がわからなかった。
腹部の検査を繰り返した末、小腸と、大腸の一部・盲腸にがんが見つかり、2008年に切除する手術を受けた。「腹膜などに散ってしまうと危ないと聞きました」。この時は、がんになったショックよりも、手術後に腸閉塞を起こさなくなって安堵(あんど)した印象が強い。
ここまで三つのがんを経験してきたので、月1回の血液検査や年1回の胃カメラと大腸内視鏡の検査を受けるようにしていた。その検査で14年、4度目の告知を受けることになった。今度も大腸のがん。開腹手術を受け、S状結腸を20センチ切除した。その夜、集中治療室(ICU)のベッドで目覚め、この時ばかりは天井を見ながら神様に恨み言を言いたくなった。「なんで4回目、いいかげんにしてもらえますか」
それから現在まで、大きな病気をせずに過ごしてきた。「あと15年ぐらい生きるとして、一回ぐらい何かあるのかなぁ」とぽつりと言う。医療に支えられて何度も病気を克服してきただけに、その言葉に不安の色は薄い。
2014年に大腸がんの手術を受けてからは元気で暮らしている。17年に届いた元夫で俳優の松方弘樹さんの訃報(ふほう)には驚いた。「まさか病気ばかりしている私よりも早く逝くなんて……」
離婚以来、会っていなかった。最期は苦しまなかったか、それが気になった。
四つのがんを乗り越えてきたが、どうしても手術の後遺症が残った。子宮頸(けい)がんでは足がむくむリンパ浮腫、胃の手術後はのみ込みが悪く、注意しないと食べ物がのどに詰まる。大腸がんでは、腸のコントロールがうまくいかない。「それぞれの付き合い方には慣れました」
日々の足上げ腹筋などの体操のほか、週1回は先生について、3時間のストレッチとボイストレーニングを20年以上続け、体のメンテナンスも心がける。
がんを繰り返し、弱気になることはなかったのか。
「子どもたちによく言われるんです。『天然』って。頭の切り替えが早いんですよ。くよくよしても仕方がない。2時間以上は考えない」
がん治療もそうだった。やると決めたら、強気で勇気を持って臨んで、元気で陽気に生きる……そんな気持ちを大切にしている。
今、女優の仕事では、ドラマなど撮影現場の緊張感がとても好きだ。そして長男、長女、「王子」と呼ぶ6歳の孫との時間が楽しい。(文・渡辺勝敏)
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女優 仁科亜季子(にしなあきこ)さん(68)
https://news.yahoo.co.jp/articles/8b80c01ae6fe8525b7e48f07a1b3f8f31a5b2757
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