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- 22/01/19 06:40:25
2000人の死亡診断書を書いてきた「看取りの医者」であるホームオン・クリニックつくば理事長の医学博士・平野国美氏が語る。
「多くの人は、死を迎えるとき、1週間から2週間前に昏睡状態に入っています。おそらく音や声は聞こえているけれど、言葉の意味を理解しているとは思えません。脳内麻薬のエンドルフィンが出ており、『夢』を見ているような状態になっているでしょう」
「今までの看取り経験でいえば、がん患者でも老衰で亡くなる方でも、最期は平穏で、穏やかな表情で旅立ちます。人間の体や脳は『死』を受け入れるようにできている」
死ぬ瞬間というものはいかなるものなのか。平野氏は、死の直前、意識が朦朧として昏睡状態に入ったときは、「睡眠の状態と同じなのではないか」と説明する。
「脳内麻薬が分泌され、二酸化炭素の貯留が起こる。これによって、死を迎える体は、非常に心地よい状態になっていると考えられます。死の瞬間に意識を持っている人はいないでしょう。安らかに死に至るのです」
脳内麻薬のエンドルフィンは、幸福感を感じさせる物質だ。
「たとえばみぞおちを思いっきり叩かれて気絶したときなどに、脳から分泌される物質です。人は激しい痛みを感じるときには一気にエンドルフィンが分泌され、意識を失います。亡くなる間際に、エンドルフィンが出ることで、人に幸福感を与え、たとえ無神論者であっても、あたかも神様に会ったかのような感覚に誘われるのではないかと思われます」(平野氏)
人によっては、ここで「お迎え現象」に遭遇するようだ。昏睡状態を脱した患者から、平野氏が聞いた体験談がある。
「腰の悪いおばあちゃんでしたが、夢のなかで飛ぶように歩いていたというんです。とても心地よい状態で、川とお花畑が見えてきたという。『ひょっとすると、これがあの世の世界かもしれない』と思ったそうです。川の向こう岸では、亡くなった母親が手を振っていた。嬉しくなって川を渡ろうとすると、息子の声がして、目が覚めたといいます」
平野氏は、昏睡から戻った何人もの人から、ほぼ同様の話を聞き、死の瞬間は、幸福感に満たされて迎える可能性が高いと考えているという。
小説家で医師の久坂部羊氏もこう語る。
「私が看取ったどの患者さんも、表情を失い、しかし非常に穏やかで安らかな顔になります。私自身は、これを何度も経験して、死はそんなに怖いものではないと考えるようになったのです」
死の瞬間は、決して悶絶するような苦しいものではないようだ。そのとき、意識を失ったまま、人は何も考えずに死んでいくのか。「死を予感させる瞬間」を体験したことがあるという、僧侶で作家の玄侑宗久氏に聞いた。
「私が28歳のときでしょうか。7mもある木から下に落ちました。普通は2~3秒で地面に落ちるはず。ところが、木から足を滑らせた瞬間から、別の時間に入った。15分くらいあったのではないかと思うくらい、ゆっくりした時間のなか、走馬灯を見ました。無数の黒い枠のある写真が何枚も連なって出てきたんです。次々と見覚えのある場面が出てきます。シアターの観客の状態でした。それを見ながら地面に落ち、病院に運ばれました」
不安も恐怖もなかったという。この体験により、玄侑氏は、死の瞬間には「完全な受け身」になるものだと自覚したという。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68398?page=2
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