「犬の引き取り屋」で生き、死んでいく犬たち 「不幸」の再生産を止めるため、求められる二つの施策

  • なんでも
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    • 小早川隆景
      21/03/09 23:33:32


    ●「治療が必要な犬の存在には気付かなかった」(栃木県)
    実は動物愛護団体がこうした様子を確認した前日、この犬の引き取り屋に、栃木県動物指導センターの職員2人が監視、指導に入っている。にもかかわらず、実際に施設内に立ち入った職員の一人でもある岡村好則・同センター所長補佐兼普及指導課長(当時)はこう話す。

    「犬が約150頭、猫が約20頭いてすべての動物を確認したが、治療が必要な犬猫の存在には気付かなかった。清掃もされていた。この業者の飼養環境が著しく悪いとは見ていない」

    同じ現場に、1日しか違わない日程で立ち入っていながら、ここまで見解が異なるのは不思議な現象だ。

    2015年5月30日付朝日新聞朝刊に「ずさん管理、10年『放置』」という見出しで東京都の動物愛護行政の問題について書いたこともあるが、自治体による監視・指導が、業者の実態に追いついていない事例はままある。栃木県の場合はどうなのか……。少なくとも2015年3月上旬に私自身が目にした状況と、栃木県の見解とが異なることには言及しておきたい。

    そして2016年5月12日、この業者は動物愛護団体から動物愛護法違反の疑いで栃木県警矢板署に刑事告発され、同署は告発を受理した。

    ●「犬の引き取り屋」を必要とするビジネスモデルが問題
    ところで、以前に取材した際、この犬の引き取り屋を営む男性はこんな発言をしていた。

    「週に1、2回は必ず電話があって出向いている。1回あたり5~10頭、多いときは30頭くらいを引き取る」

    「ペットショップの店頭には20万、30万で売れる新しい犬を置いたほうがいいと、賢い社長はわかってる。バカな社長は1万、2万で売ろうとする。だから『新しい犬をどんどん入れろ。5、6カ月の犬は俺の所に持ってこい』って言ってるんだよ」

    「毎日、掃除して、すべての犬を運動させている。殺さないで、死ぬまで飼う。僕みたいな商売、ペットショップや繁殖業者にとって必要でしょう」

    生体小売業を頂点に据えたビジネスモデルが温存されている限り、この男性の言うように、犬の引き取り屋というビジネスは一部の業者にとって必要不可欠なものなのだろう。

    だがそもそも、犬の引き取り屋というビジネスが必要なってしまう構造にこそ、問題があるのではないか。犬の引き取り屋のもとで生涯を送る犬猫をこれ以上増やさないために、大きくわけて二つの施策が求められる。

    一つは現在、附則によって「骨抜き」になっている8週(56日)齢規制を一日も早く、本則通りに実現すること。8週齢規制が、子犬や子猫の心身の健康を守るために必要なことは論をまたないが、それと同時に犬猫等販売業者の適正化に大きく寄与することは明らかだ。

    もう一つは、2016年度にも環境省が検討会を立ち上げて導入を目指すという、飼養施設規制と繁殖制限だ。飼養施設の大きさなどが具体的な数値をもって規制されることになれば、自治体による監視・指導は格段に行いやすくなる。また繁殖制限が導入されれば、パピーミル(子犬繁殖工場)などでの大量生産は困難になるだろう。

    不幸な境遇におかれる犬猫を減らしていくためには、これらの施策をもってすみやかに動物取扱業者の適正化を進め、現在のビジネスモデルに変革を促すことが、何よりも必要なのではないだろうか。

    今日も日が当たらぬ、劣悪な環境で生き、死んでいく犬や猫がいる。環境省や各自治体による一日も早い対応が待たれる

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