• No.3 元治

    20/07/06 13:31:00

    (続き)

    4】「共通の敵」を失ったすえの分裂劇

     もちろん、「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」の分離は、この桜井氏による「DHC”虎ノ門ニュース”生放送中の抗議活動」という、界隈を震撼させた事件だけが原因ではない。むしろこの事件は結果に過ぎないのである。そのもっと以前から、足掛け8年近く継続されている第二次安倍政権への評価をめぐって、保守界隈は「親安倍」と「反安倍」に分裂傾向が進んでいる。 

     「親安倍」は前述したとおり、動画再生回数やSNSでの引用回数で群を抜いて圧倒的に寡占的な『DHCチャンネル』で、この主張は第二次安倍政権誕生以前から一貫して変わらない安倍政権へのほぼ無批判な支持と追従である。一方、2010年代後半にCS放送部門から撤退して動画再生回数では『DHCチャンネル』に劣後する状況となった前掲『日本文化チャンネル桜』は、第二次安倍政権の進める(事実上の)移民政策(と彼らが主張する)をやり玉にして、「安倍晋三は日本を救う救世主」と謳っていたものを「安倍政権はグローバリズムに日本国家を売り渡す愚宰」と猛烈に批判して、現在では番組全体が完全に「反安倍」に「転向」した。

     さらにその外縁部では、沖縄における反基地活動家らを無根拠に呪詛するいわゆる「沖縄保守」の内部で民事訴訟が乱舞するなど、こちらも事実上の内紛・分裂状態に至っている。

     このような「保守界隈・ネット右翼界隈」の分裂劇は、第二次安倍政権が誕生するまでは全く無風であった。麻生政権が2009年の総選挙で惨敗して民主党(当時)の鳩山由紀夫内閣が誕生すると、「保守界隈・ネット右翼界隈」も「行動する保守」も、皆こぞって「打倒民主党政権」ののろしを上げ、一致連帯していた。その結束力は強力で、正しく毛利元就が言ったとされる「三本の矢」であった。

     ところが第二次安倍政権が長期政権の様相を呈してくると、「共通の敵」を失った「保守界隈・ネット右翼界隈」はたちまち分裂する。すなわち、その中に包摂されていた高度な自治政府である「行動する保守」が、「保守界隈・ネット右翼界隈」と分離するのも当然の成り行きである。

     民主党政権打倒のみを旗印にして、一致結束していた「保守界隈・ネット右翼界隈」は、実際のところE・バークの保守主義に傾倒するものから、憲法9条改正論者、反自虐史観(反東京裁判史観)、対米自立という比較的保守本流に近いもの。果ては単なる陰謀論者、差別主義者、在日コリアンに的を絞って嘲笑を繰り返すもの、基礎教養が何もないがデマを動画やSNSに垂れ流すことにより売名を図るもの。あるいはビジネスの為に保守業界に入り込んだもの、という本来到底一致団結することが不可能な(言い方は悪いが)烏合の衆だったのである。それが「共通の敵」である民主党政権を失ってほどなく、分裂や内紛を繰り返すようになったのは何も不思議なことではない。

     このように、「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」の分離は、共通の敵を失った烏合の衆の内紛が原因であり、結果としてそれにより遠心分離器にかけられるかの如く「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」が分離したことにより、より強い差別性と排外性を持った「行動する保守」が可視化され、その投票先が桜井誠氏一本に絞られたことにより、今回の18万票という数字が出来上がったのである。

     この数字だけを表面上なぞると、いかにも東京で極右勢力が伸長しているかのように思えるが、実際はそうではない。彼らの背景にある離合集散の歴史を考えるとき、桜井誠氏の18万票は一過的には衝撃とはいえ単なる内紛の結果に過ぎないのである。

    古谷経衡
    作家/文筆家/評論家

    https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20200706-00186751/

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