- なんでも
- 霊亀
- 20/03/29 13:19:42
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200303/dom2003030002-n1.html
新型コロナウイルスの検査については重症者を中心としているのが政府方針だが、野党やマスコミなどからは、もっと多くの検査をするべきではないか、さらには全国民の検査もやるべきではないかといった批判もあるようだ。
全国民まで検査すべきだという意見は、国民が心配しているからという理由によるものだ。これはもっともではあるが、検査が完璧ではないことやコストパフォーマンスも考慮してみよう。今回のコラムは、統計学入門になるが、割り算しか使わないので、食わず嫌いにならないでほしい。
横浜港で検疫中のクルーズ船を実例にしよう。2月26日の厚生労働省の発表では、それまで4061人の検査で705人が陽性だった。これは、有病率705/4061=17%だ。
新型コロナウイルスに対するPCR検査の真陽性率(感染している人に対する検査陽性とされる割合)や真陰性率(感染していない人に対する検査陰性とされる割合)は、それぞれ公表されていないが、ともに95%としよう。これは、かなり精度の高い検査という意味だ。
前述の検査では、4061人中、感染している人は705人で感染していない人は3356人だった。感染者の705人中、検査陽性になるのがその95%とすると670人、検査陰性は35人になる。一方、非感染者3356人中、検査陽性になるのが5%の168人で検査陰性は3188人。つまり、偽陰性が35人、偽陽性が168人も出てしまうのだ。
この例の場合は5%で試算したが、誤判定はどんな検査にもつきものだ。もちろん、実際にはPCR検査で判定しても、CT検査等などにより本当に感染しているかを確定診断する必要がある。クルーズ船の場合、誤判定が5%としても、船内で集団感染しており、有病率が17%と高いので、検査を行うことが合理的だ。
しかし、極端な議論として全国民を対象とするとどうなるか。日本国内の感染者は以前のコラムで、クルーズ船を除いて数百人程度と述べた。仮に、国内特定場所で小規模な感染があり、1桁上がって数千人程度になったとしても、全国民での有病率は0・005%程度だ。しかし、誤判定は5%の数百万人程度にもなってしまい、正確な確定診断はほぼ不可能となる。要するに、一定の誤判定のある検査は有病の確度の高いグループで実施したほうが効率的というわけだ。
PCR検査費用は、現在無料だが、当初任意検査料は4200円だった。全国民に対して検査をすると、それだけで5000億円だ。それで1000人程度の感染者を探し出すのはコストパフォーマンスも悪い。誤判定率が有病率より高いと検査は逆効果なので、一定のふるいにかけて、有病率が高いと思われるグループに狙いを定めて、検査を行うほうがより効果的だ。
野党やマスコミは「検査完璧主義」だが事実は違う。政治的な意思決定は、誤判定を前提とした上で住民不安を考慮して行うべきだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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