保育の現場戻りたいが…多い仕事量、フル難しく　有資格者の悩み

　有資格者で保育の仕事をしていない「潜在保育士」のコミュニティーが京滋で生まれている。潜在保育士の中には、保育所で働いていないことなどを理由に資格があることを表だって言いづらい人も多い。コミュニティーでは気兼ねなく保育への思いを語り合い、現場を改善していこうとの機運も芽生えつつある。
　「保育所では仕事量が多すぎてしんどかった。出産で現場を離れたけれど、何か社会の役に立ちたい」「パートで保育士の仕事を再開しようかと思っている。でも（居住する市では）待機児童が多く、自分の子どもを保育所に預けられるかどうか…」
　京都市西京区の母親向け交流施設「ママいろはうす」で１１月中旬、「ＫＹＯＴＯ潜在保育士部」の２回目の交流会が開かれた。同区や向日市などから６人が参加。どんな形であれ、子どもに関わりたいという気持ちを吐露した。地域で親子向けのイベントを始めた女性もおり、互いに刺激を受けていた。
　メンバーは以前保育所で働いていた人をはじめ、資格はあるが勤務経験のない人、資格取得を目指している人が対象。職業あっせんはしないなどのルールを設け、ママいろはうすの運営団体「マミーズアップ」の支援を受ける。
　同部を立ち上げたのは、中村真映美さん（４７）＝同区。中村さんは幼稚園や保育所に計１０年務め、結婚を機に退職した。次男（９）が小学校に入った頃から現場に出たいと考えるようになったが、家族を大事にする思いも強く、働き方をめぐって「もやもやした」状態だったという。
　そんな折、友人の紹介で昨年からママいろはうすの運営に参加。企業が開催する女性向け講座などの託児スタッフとしても働き始めた。「以前は自分のことを『一応保育士です』と『一応』を付けて言っていた。でも、自分を大事にして、保育士であることに自信を持とうと考えるようになった」と振り返る。「同じような思いをしている人を応援したい」と潜在保育士部の活動に期待を込める。
　ただ、職場の人間関係や園児の親との関係、膨大な業務量に苦労し、「嫌な記憶だけが残ってしまった人もいると思う」と中村さん。「回を重ねる中で、そうした気持ちを吐き出し、切り替えるきっかけとなる場にもしていきたい」と話す。
　滋賀では一足先に取り組みが進んでいる。活動するのは「ＳＨＩＧＡ潜在保育士部」。保育士の木村路子さん（４９）＝大津市＝が昨年７月に始めた。現在メンバーは約５０人。月１～２回、交流会を開いている。
　木村さんは長年保育所に勤務していたが、もっと柔軟に親子に関わりたいと２年前に退職。個人的に活動する中で、「私も保育士なんです」とこっそり打ち明ける母親が多いことに気づいた。潜在であることを否定せずに話せる場の必要性を感じた。
　活動を続けるうちに、パートで保育所勤務を再開するメンバーが現れ始めた。「現場から離れているからこそ、気持ちにゆとりが持て、前向きになれることもある」と木村さんは話す。
　保育士の働き方をテーマにしたワークショップも２月に開催した。保育所勤務はフルタイムで担任を持つことが基本。だが、「家庭に支障のない範囲で働きたい」という意見も少なくなく、より柔軟な雇用形態が必要との意見が出てきた。
　木村さんは「働き方や担任の持ち方を見直すことができれば、現場に戻りやすくなるのでは」と指摘。「潜在保育士の立場から見えることを発信し、外から保育を支えたい」と力を込める。

　潜在保育士　京都府や滋賀県によると、京都では約１万２千～１万８千人、滋賀では約１万人おり、実際に働いている人より多い。算出方法は、保育士登録者数から認可保育所や小規模保育事業所などの勤務者数を引く。認可外保育所で働く人は勤務者数に含まれていない。潜在保育士は全国では９０万人程度いる。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181210-00000010-kyt-soci