35歳の野原しんのすけは還暦のひろし・みさえと「近居」するのか

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    • ラッコ
      18/03/21 14:58:42

    30年後の「クレヨンしんちゃん」

     こうした傾向は20世紀末まで続いたから、さしあたり『クレヨンしんちゃん』の野原家は「大都市移民1世」の生き方を想像するのによい例だ。

     野原しんのすけ(5)の父・ひろし(35)はサラリーマン、母・みさえ(29)は専業主婦だが、ひろしの実家は秋田、みさえの実家は熊本である。

     ひろしは上京して大学を中退、みさえは地元の女子短大を卒業して上京、東京でサラリーマンとOLとして働いていたところ出会って恋愛結婚をし、みさえはそれをキッカケに仕事を辞めた。

     学歴については諸説あるようだが、ここで重要なのは、2人が地方出身ながら都会で出会って都会に住み続けることになったということだ。

     都会とはいっても、まだ土地バブルのはじけない1990年に連載が開始した『クレヨンしんちゃん』では東京での持ち家は荷が重い。ひろしは埼玉県・春日部から満員電車で東京に通勤する生活を送る。

     今からみると持ち家があるだけでも羨ましいが、それはさておき、当時としては典型的な都会のサラリーマン家庭像である。しかし、いま想像して欲しいのはその家族の30年後の姿なのである。

     ひろしとみさえがそれぞれ65歳と59歳になるなか、しんのすけと妹・ひまわり(0)は35歳と30歳である。パラサイトシングルになっているかもしれない。結婚するとするなら、春日部の5LDK二階建ての家では同居できるかどうか、外に出ているかもしれない。

     だが、いずれの場合にせよ、2人が地方に出たり、祖父母の実家に帰ったりしている将来は想像できない。想像されるのは2世代が同じ都市圏で同居・近居している将来である。

     これらはアニメを前提にした想像に過ぎないが、現実に起こっていることでもある。

     つまり、大都市圏に定住した「大都市移民1世」の子どもたち、すなわち「大都市移民2世」は、さらに出稼ぎにいく場所もないので、親と同じ都市圏で人生を送ることになるのだ(平山洋介「近居と住宅政策の課題」、大月敏雄+住総研編著『近居』学芸出版社(2014年)所収も参照)。

     日本で二世帯住宅が流行ったのは1980年ごろからだが、これも「大都市移民2世」の定住のなかで生じた現象だ。「大都市移民1世」が地元の親世代と地理的に隔絶されていたのと比較して、「大都市移民2世」においては親と同居したり、近居したりする可能性は飛躍的に高まることになる。

     こうして都市における近居は、戦後日本における人々の流動と滞留のうねりのなかでますます重要になってきている。

     

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