相撲の「注射」はどのように機能しているのか?【互助システム】

  • なんでも
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    • 金木犀
      17/12/02 14:41:20

    続き

     これはじつに素晴らしい“互助会システム”で、このようなことをくり返していくと、たいていの力士の星はイーブンに限りなく近づく。もし、毎日が注射による星回しなら、理論的には14日目には7勝7敗となる。ただし、これが成立するためには、幕内の同じような番付位置に注射力士がそろわなければならない。つまり、注射力士のまとまった数によるグループが成立して初めて可能だ。

     平幕でも上位力士の場合は、横綱・大関陣との対戦が多い。この場合は、上位陣に星を売ったり貸したりして負け越し、番付が下がった翌場所に、平幕下位で貸している星を返してもらって勝ち越すという方法がある。これだと、長く幕内に留まれる。

     上位に上がると大きく負け越し、1、2場所下位で小さく勝ち越して番付を上下する力士を「エレベーター力士」と呼ぶ。かつてはこういう力士が多くいた。おそらく旭鷲山はその筆頭だ。

     さて、注射によって力士間に星の貸し借りができると、幕内だけでも約40人の力士がいるから、その関係は複雑化をきわめる。ある力士が誰に星を借り誰に貸しているか、またトータルでいくつの借り越しがあるのかということが整理されないと、互助会システムは正確には機能しなくなる。

     これは笑い話ではないが、力士のなかには自分の星の貸し借りを忘れてしまう者がいる。それで、すでに勝ち越しているのに千秋楽についうっかり星を返すのを忘れ、場所後ダブルで支払った力士もいる。


     そこで、こうしたことの調整役として登場したのが、「中盆」である。中盆というのは、注射力士たちの間を仕切り、間を取り持つ力士のことだと思えばいい。中盆として有名なのは、千代の富士全盛期時代の板井(最高位は小結、板井圭介氏)である。中盆だからといって悪の元凶などと考えたらとんでもない間違いで、戦後最大の中盆と言われた板井は、まず実力(ガチンコで強い)があったから、知略の横綱・千代の富士がかわいがったのである。しかも板井氏の場合は、頭も切れたので、力士間で重宝された。現在は、板井氏のような中盆がいない。注射力士とガチンコ力士の間を取り持つ力士もいない。

     中盆というのは、注射による序列社会のキーマンであり、その存在がどれほど角界全体に経済的繁栄をもたらしたかを考えると、その末路は哀れである。

     板井氏は、あまりに切れた中盆だったから、協会に嫌われ、無理やり廃業させられた。当時の二子山理事長が猛反対し、それまでは、春日山を借株で襲名する予定だったのに、突如として「巡業に熱心でなかった」という理由にもならぬ理由で角界を追放された。

     この板井圭介氏を、私が所属する日本外国特派員協会が呼んで、記者会見を開いたことがあった。

     2000年1月のことで、このとき、板井氏は現役時代の注射を認め、注射にかかわった20名の力士の実名を公表した。慌てた相撲協会は板井氏に謝罪を求める書面を送付したが、最終的に「板井発言に信憑性はなく、八百長は存在しない。しかし板井氏を告訴もしない」という玉虫決着で、この問題は終息した。

     相撲が今後も国技として繁栄していくためには、なにが必要か? このような歴史の教訓から学ぶべきだろう。

    https://news.yahoo.co.jp/byline/yamadajun/20171201-00078810/

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