骨付き鳥
休日が極端に少ない、過熱する中学・高校の部活動に対して昨年、休養日を設けるように文部科学省が動き始めた。労働条件が劣悪な「ブラック企業」ならぬ「ブラック部活動」問題。本誌アンケートも利用して、学校現場の「今」を取材した。
「あの先生、やばい。テスト期間中も練習やるんだって」
中部地方に住む40代の保護者が、公立高校に通う息子からそう聞かされたのは、入学した年の1学期の中間考査前だった。
息子は、ある球技の部活動に入っている。これが典型的な長時間部活。平日の休養日はなく、帰宅はいつも午後8時半。土日も練習か遠征試合が続く。
学校のルールでは、もちろんテスト週間は部活動禁止だ。だが、朝練はおろか、授業後の練習も「自主練」と称して、普段どおり行われた。せめて土日は休みだろうと思っていたら、顧問は試合観戦の無料チケットを配って見に行かせた。
教員が残業、休日出勤を強いられ、悲鳴をあげる「ブラック部活」問題を取材していくと、子どもを持つ親たちからも、「学業もままならない」という不安の声が聞こえてくる。
文部科学省は昨年6月、中学と高校の部活動に行き過ぎがみられるとして、休養日を設けることを柱とした改善策を発表した。今年度内には適正な休養の日数をはっきり示すガイドラインをつくる方針だ。
だが、前出の顧問にはそんな動きはどこ吹く風。
「いろんなことに目を向けられる多様性を身につけてほしいのに、部活をしに学校に行くようなもの。週末の遠征なんて学校が把握しているか、わかりません。別の先生に相談したら、『部活をやりきれば志望校に行ける』と、よくわからないことを言われました。休日もなくやることを問題だと思っていないことが問題ではないでしょうか」
取材に対し、保護者はせきを切ったように語る。
実は、息子が「やばい」と言ったもう一つの理由は、顧問の暴力だ。
この保護者は、「態度が悪い」と顧問が息子の胸ぐらをつかんで平手打ちする様子を見てしまった。「いつもなの?」と後で聞くと、息子はうなずいた。多くの部員が顔や腹を殴られ、パイプ椅子が飛んでくるといううわさも耳にし、息子に尋ねると、黙ったままだった。
「言ったことがばれたら怖い、という心理があるみたいです。あごをしゃくりながら、顧問はヤンキーのようにしゃべる。恐怖で支配するスタイルです」
2013年1月、大阪・桜宮高バスケットボール部主将が顧問の暴力などを理由に自殺したことが明らかになって以降、スポーツ界全体が暴力的指導の根絶を目指しているが、一部の顧問には馬耳東風のようだ。
「それが、外からは『熱くていい先生』と評価される。こういう規範意識の薄い先生と濃密な時間を過ごすことで、息子の人格に影響が出ないか不安です」と保護者は明かした。
スポーツ庁は昨年12月、全国体力調査で調べた中学の運動部活動の休養日設定状況を公表した。
それによると、学校の決まりとして休養日を設けていない学校が22.4%、土日に設けていない学校が42.6%あった。こうした学校では、部活動指導に燃える顧問が、その裁量でいくらでもできることになる。
部活動のやりすぎは以前から指摘されてきた。1997年には当時の文部省の有識者会議で、「中学校では週2日以上」「高校では週1日以上」など、運動部における休養日の設定例のほか、練習時間についても、「長くても平日は2~3時間以内、土日も3~4時間以内をめどとする」と、子どものゆとりを確保するよう提言していた。
だが、この20年間、実態はさほど変わらない。今年1月には、文科省が改めて、運動部の部活動で休養日を設けるよう求める通知を全国の教育委員会などに出した。
週刊朝日では中学高校の部活動の現状について、アンケートを募った(注)。
中学生の母親(40代)は「外部のコーチの話が長いらしく、いつも完全下校の時間を過ぎる。真夏の炎天下、休憩時間と水分を十分にとらせない。年配の方で、休憩や水分をとるのは、『怠けている』『弱い』という考えのようです」と書いた。
長時間の拘束のみならず、一歩間違えれば、大きな事故につながりかねない非科学的なやり方が今も横行している。
運動部だけではない。中学生の子どもが吹奏楽部員という母親(40代)は「まともに休日がない。朝練に始まり、練習後に帰宅してから授業の課題を深夜までやり、慢性的な寝不足。『休みがあったら何をしたい?』と聞くと、『とにかく寝たい』としか言いません」と回答した。
※週刊朝日 2017年5月19日号
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