無念
コンドームメーカーのジェクスの報告書<ジェクス・ジャパンセックスサーベイ2013年版>では、驚くべき結果が発表された。
60代の男性は45.0%、女性は13.8%が、この1か月間に、マスターベーションをしたというのだ。
この自慰行為、しすぎることのデメリットはないのだろうか。
長年、大学病院などで性機能の問題に対応してきた、まるも腎・泌尿器科クリニック院長の丸茂健さんに聞くと、こんな答えが返ってきた。
「男性の場合、もし自分の勃起能力を将来も維持しようと思うなら、セックスや自慰など勃起の機会をなるべく持ってください」
その理由はこうだ。
男性の陰茎には平常時は酸素の少ない血液が流れている。
だが勃起することにより酸素を多く含む血液の流れに変わる。
その切り替えがポイントだと丸茂さんは説明する。
「陰茎海綿体にどっと流れ込んだ血液中の酸素が海綿体の疲労や老化しかけた組織を修復するのです」
しかし、問題も多い。
体全体が健康だった若いころと比べれば、年とともにいろいろな部分が衰える。
自慰も含めた性行為中の事故の検視をし、それを調べてきたという元東京都監察医の上野正彦さん(87)の自宅を訪ねた。
「表沙汰にはならないけど、監察医なら数件は性に絡む死に遭遇するものです。
私の場合は性行為に関する検視は500件、うち1割半が自慰中でした」
上野さんが“現場”を振り返る。
初老の男性が華やかな着物を羽織って布団に横たわっていた。
わずかに両足を開き、右手を自分の下半身に添えて。
「62歳、独居男性、オナニー死。
くも膜下出血です。
切ない死でした。
奥さんが数年前に病死し、寂しさの余り、形見に抱かれて日常的に自慰行為をしていたようです。
でもまさか、本人だってそのまま死ぬとは思っていなかったでしょう」
同じように亡妻の服を傍らに置いて自慰にふけり、心筋梗塞で死んだ60代の男性もいたという。
62歳の女性ではこんな例も。
「畳に下半身裸で仰向けに倒れていた。
足を少し開いて、股の間に何かがはさまっている。
よく見るときゅうりのヘタで、膣に実がすっぽり入っていた。
オナニー中にくも膜下出血で死んだんです。
また、コタツの足が入ったままの人もいました。
このケースは第一発見者が息子でした。
ショックだったと思います」
≫続く
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