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- 匿名
- 16/02/01 16:07:00
濃いコーヒーをすするのを日課にしている東京・南青山のカフェで、衰えの話を始めた。「32歳でがんで胃を切ってから、体力をつけようと馬に乗り始めたんです。50でも60でも野山を走る『山賊馬術』をやってたんですけど、70になったら全力疾走で腰がずきんずきん痛んで、乗れなくなったんです」
8日間一睡もせずマージャンを打ち続けた記録を持ち、海外ロケでも風邪一つひかなかったスタミナだったが、衰えは脳にも来た。「60まで取材ノートを持たなかったんです。相手の名前や電話番号なんか全部覚えてたのに、思い出せなくなり、いかんなあって思ったんです」
囲碁の棋譜やマージャンの牌(はい)譜を覚えている抜群の脳も年には勝てないのか。ところが、あることをきっかけに記憶力がよみがえり始めた。語学だ。
「小説に使うボサノバの歌詞を読むため、ポルトガル語を始めたんです。ラテン語系は動詞の活用が何十通りもあって神経衰弱になるくらい大変なんです。トイレや風呂で毎日覚えていたら、他の記憶力もいっぺんに戻ってきたんです」
動物でも人でも食べ物でも、好きになると徹底的に究めたくなる性分を、「自分でも怖いくらいの愛情過多症」と呼んでいた。「熊とか馬とかを命がかかっちゃうくらい愛するんです。だけど70を超えたころから、ふーっとなくなったんですね」
のめり込まず、距離を置いて楽しめるようになったが、原因はまだ究めていない。
「セックスのパトス(欲情)がなくなったのと関係しているとも思いますね。今でも、女の子に囲まれれば素晴らしいですよ。でも自分との関係で相手を見なくなるんです。ブラジルでも、青空に溶けるんじゃないかってくらい肌の白い女性があっちから来るでしょ。胸が豊かでね。ああ、素晴らしいなあって見てますよ。素直に『美』として女性を見られるようになったんですよ」
70になったら自由に生きたいと思っていた。北海道の家族から離れて1人で暮らし、テレビの仕事もやめ、書くことに専念したかった。「動物好きの優しい先生」というイメージが定着したことに後悔もないことはない。「子どもの頃から、作家になりたいってだけでしたからね。いろんなことをしたり、見たりしてしまうと、逆に書けなくなるってのはありますから」
朝日新聞http://mainichi.jp/articles/20160129/dde/012/070/006000c
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