佐川印刷：元役員に逮捕状　資金流用の疑い、京都地検

総合印刷会社「佐川印刷」（京都府向日市）の子会社の資金約８０億円が不正流用された疑惑で、元役員の男（６１）が関与した疑いが強まったとして、京都地検特別刑事部が電子計算機使用詐欺容疑で逮捕状を取ったことが、捜査関係者への取材で分かった。元役員は東南アジアに滞在しているとみられ、地検は入国時に空港や港で身柄を拘束できるよう「国際海空港手配」の手続きを取った。
捜査関係者によると、財務や経理を担当していた元役員は昨年９月、業務とは無関係の目的で、子会社「エスピータック」（同府亀岡市）の銀行口座からインターネットバンキングで約４億円を不正に引き出し、だまし取った疑いが持たれている。
佐川印刷によると、元役員は２００９～１４年、取締役会の決議を経ないまま、同社の印鑑を無断で使用するなどの手口で、総額約８０億円を流用したとされ、シンガポールでのサーキット場建設（約５４億円）▽元役員が設立した別会社への資金（約１５億円）▽京都府南丹市のゴルフ場買収（約７億円）▽モンゴルの金融機関への増資（約４億円）－－に充てられていたという。
社内調査に対し、元役員は「自分の将来の資金を確保するためにやった」などと不正を認め、１月末に辞任。その後、出国した。
京都地検は同社による告訴を６月１６日付で受理。同２５日には、元役員の自宅や流用にかかわったとされる知人男性の会社など関係先約２０カ所を電子計算機使用詐欺容疑で家宅捜索していた。
佐川印刷はこれまで元役員の資産や知人男性の事務所など数カ所を差し押さえたが、同社幹部によると、流用分の大半は回収のめどが立っていないという。佐川印刷は１９７６年設立で、関係会社を含めた従業員は約２２００人。