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一方、弁護側が証拠として採用を求めたのは、被告が弁護人にあて、無実を訴えた手紙のみ。主張を裏付ける客観証拠もない状況で今月2日、注目の被告人質問が始まった。
被告は犯行があった午後9時15分ごろについて、近所を散歩していたと主張。記憶の根拠をこう述べた。
「毎日、NHKの『ニュース7』(午後7時~7時半)、次の『クローズアップ現代』(午後7時半~7時56分)を見ている。9時54分からはテレビ朝日の『報道ステーション』を必ず見ている。だから、8時半ごろに外出して、9時 50分ごろに戻ってきたのは間違いない」
自室で知人、友人が犯行に及んだ可能性については「友達は一人もいない」と否定。「自分に嫌がらせをする目的で誰かが部屋に侵入したのかもしれない」と訴え、持論を展開していった。
被告「うちは築20年以上の中古マンションで、カギも安物。セキュリティーは非常に甘いんです。例えば、新聞の購読料を滞納していたときに、取り立ての担当者が建物玄関のオートロックを抜けて、部屋の前に居座ったこともあった。その時は警察を呼んで、帰らせましたけどね」
弁護人「罪をなすりつけ困らせようとするほど、あなたを恨んでいる人がいるんですか」
報道番組の熱心な視聴者という被告は、時事的な事件を引用して返答していく。
被告「そうとしか考えられません。
遠隔操作ウイルスによる冤罪事件がありましたが、現代は昔と違い、考えられないような犯罪があるんです」
検察側がこの第三者侵入説の根拠がないことを指摘すると、被告は憤りをあらわに。
続いて取り上げたニュースは昨年 、知人女性宅に侵入し、居合わせた男性を殴ったとして新宿消防署長の男が逮捕された事件だった。
「なぜか合鍵を持っていて、住居に侵入している。実際に同様の事件は起きているんですよ。消防署長という立派な人だってやっているんですから!」
誰かが自分を陥れている。被告はその考えに確信を抱いている様子だった。
「上京してから、いろいろとアンラッキーなんですよね。初めて勤めた会社は給料が未払いになり、労働基準監督署に行っても解決されなかった。東京は、色んなことがありえる街なんです…」
また、イチローばりの“レーザービーム” で救急車に瓶を命中させた背景として、検察側が指摘した「元高校球児」の経歴については、苦笑いを浮かべて釈明した。
「野球部の所属は4カ月だけ。初心者で、筋トレとボール拾いばかりしていた。中学では吹奏楽部だったし。それから20年、スポーツなんて何もしていません」
熱い思いのたけを訴える被告をよそに、男性裁判官は頬づえをつき、退屈そうな様子。質問も淡泊なものだった。
裁判官「1点だけ聞いておきますが、散歩中にどこか店に立ち寄りましたか?」
被告「行っていません」
裁判官「じゃあ確かにここにいた、という証拠は残りようがないんですね」
被告は声を振り絞り、訴えた。
「私はアリバイのために生きている訳 じゃない!」
検察側は懲役1年を求刑。判決は今月28日に言い渡される。被告の主張が採用されるかは不明だが、いずれにせよテレビ以外の生きる目的を見つけ、充実した人生を送られるよう願う。- 0
12/11/24 22:25:43