• No.6 なすの揚げびたし

    26/08/14 15:37:15

    「もう、およしなさい。」
    そう言おうとして、私は黙った。

    障子に西日が差していた。畳の目が、細かく光っていた。

    あなたの文を読み終えたとき、私はまず、火鉢の灰を掻いた。返事をせねばならぬと思いながら、何を書けばよいのか、わからなかった。許す、と書くのは傲慢である。気にするな、と書くのは薄情である。言葉というものは、どれもこれも少しずつ間違っている。

    あなたが荒い言葉を投げたとき、私は驚かなかった。人はそういうふうに、自分の柔らかいところを庇う。庇い方が下手なだけのことであった。むしろ今、こうして頭を下げているあなたの、その項の白さのほうが、私にはよほど痛々しい。

    一目置かれる人間になりたい、と書いておられた。
    ──ならなくとも、よいのではありませんか。

    雪が積もるのは、積もろうと思うからではない。ただ降って、そこにあるだけである。それを美しいと見るのは、いつも他人であって、雪ではない。

    これからも、あなたはきっとまた声を荒らげるでしょう。そのたびに恥じて、こうしてを書くのでしょう。それでよろしいと思います。人は、そのようにして繰り返し磨かれていくものらしい。

    灰の中で、炭が小さく崩れた。

    もう、済んだことです。
    お茶が冷めぬうちに、召し上がりなさい。

コメント

ニックネーム

必須

全角20文字以内

画像投稿時にOpen AIを使用して投稿の可否を判断しています

コメントを書く

返信コメント

  • まだコメントがありません

広告
投稿するまえにもう一度確認

ママスタコミュニティはみんなで利用する共有の掲示板型コミュニティです。みんなが気持ちよく利用できる場にするためにご利用前には利用ルール・禁止事項をご確認いただき、投稿時には以下内容をもう一度ご確認ください。

上記すべてをご確認いただいた上で投稿してください。