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- 23/11/05 10:49:53
「車に乗せてくれ」と叫ぶガザ住民、通信途絶え「救える命も救えなかった」…日本人スタッフ「極限」の３週間
読売新聞11/4(土)23:44
「毎日空爆の音を聞き、水や食料が不足していく中で、命の危険を感じていた」――。パレスチナ自治区ガザから退避した国際ＮＧＯ「国境なき医師団」職員の白根麻衣子さん（３６）は４日、報道各社の取材に時折、涙を浮かべ、「極限状態」だったという３週間を振り返った。（大井雅之）
張り裂ける思い
「車に乗せてくれ」「なんで行ってしまうんだ」。１０月１３日、滞在先のガザ北部から南部に避難していた白根さんは、自らが乗ったＮＧＯの車両を追いかけてくる住民らの叫び声を背に、胸が張り裂けそうになった。
今年５月からガザ市の事務所で、現地スタッフとして働く医師や看護師らの採用や経理に携わっていた白根さん。戦闘が始まった１０月７日朝は宿舎の自室にいて、爆音で目を覚ました。
「目の前のビルの後方から、これまで見たこともない数のミサイルが打ち上げられていた」。急いで地下のシェルターに逃げ込んだが、その音は一向に鳴りやまなかった。
反撃するイスラエルの空爆は昼夜の区別なく行われた。宿舎と道路を挟んで約５０メートル先の建物は破壊された。
イスラエルによる退避要求を受け、南部に逃れる途中も、爆撃を受けた建物を数え切れないほど見た。支援をしていた病院の近くも被害に遭っており、怒りがこみ上げた。
通信も途絶
国連施設の屋外で避難生活を始めたが、南部でも空爆が続き、危険と隣り合わせの日々だった。
食事は缶詰や野菜、パンでしのいだ。現地スタッフが危険を冒して調達してくれたが、日に日に物資は不足していった。「最後は食料が尽き、１日に１回だけ料理し、分け合って食べた」
最も不安を感じたのは１０月２７日、ガザの通信網が遮断された時だ。「あなたなら大丈夫」と励ましてくれた母と連絡できなくなった。
通信が途絶えたため、住民らも救急車を呼べない。「爆撃による多くの負傷者が搬送できず、助けられる命も救えない状況だった」と憤る。
退避、思い複雑
今月１日。「国境が開く」と連絡を受け、エジプトとの境にあるラファ検問所に車で向かった。「本当に越えられるのか」「これからガザはどうなるのか」。複雑な思いが交錯する中、エジプトへの入国手続きを終えた。
白根さんは「（ガザの）中にいる時は目の前のことで精いっぱいだったが、外に出て改めて、悲惨な現状に憤りを感じる」とし、「ガザでは当たり前の日常が戦争で奪われ、人間として最低限の生活も送れない。今、何が起きているのかを多くの人に知ってほしい」と訴えた。
支援物資届かぬ２６トン
ガザ地区の医療状況の改善につなげるため、国境なき医師団は医療物資約２６トンを用意したが、現地には届けられていない。エジプトとの境界にあるラファ検問所を通過できる物資が大幅に制限されているためだ。
医師団によると、支援物資の内訳は、外傷患者の処置に必要な医薬品で、手術用のメスや消毒薬、ガーゼなど。医師団の村田慎二郎・日本事務局長は、「この物資も約８００件の外科手術と約２万件の応急処置に充てる分でしかない。届けられたとしても数日分にしかならず、無差別攻撃の即時停止が必要だ」としている。
病院、多くが機能停止
国連人道問題調整事務所（ＯＣＨＡ）などによると、ガザの死者は３日までに９２５７人にのぼり、うち３８２６人は子どもだった。負傷者は２万３０００人を超えている。
ガザの人口は２２０万人だが、そのうち１５０万人が自宅を追われ、国連パレスチナ難民救済事業機関（ＵＮＲＷＡ）の施設や病院、学校に身を寄せている。これらの建物は避難者であふれ、多くの人たちが路上で寝ているという。
深刻なのが食料や飲料水の不足だ。南部や中部では、わずか９軒のパン屋が小麦粉や燃料の残量を気にかけながら営業し、人々はパンを手に入れるため、空爆が続く中で４〜６時間も行列に並んでいる。
イスラエルに激しく攻撃されている北部では１０月８日に水の供給が止まり、地上戦によりペットボトルの水を運び込むこともできない状況だ。
医療提供体制も逼迫ひっぱくしている。入院設備がある３５の病院のうち１４か所と、診療所の７割が燃料不足などから機能停止に陥っている。
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