- なんでも
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その高校は、長く急な坂の上にあった。
高校の校舎で行き止まりだから、その坂の途中の建物は、高校に関係する施設がまばらにあるだけだった。
遠方から入学した生徒のための寮や、教師の公営住宅など。
ある年、それは起きた。
異常気象だったのか、ある蛾の幼虫が大量発生したのだ。
街中にはそれほど異常な発生は無かったが、その高校の坂は、道こそアスファルトだったが、まばらに建っている施設の他は殆ど手付かずの野原だったため、舗装道路を埋め尽くさんばかりの幼虫が蠢いていた。
踏まなければ通学できない。
夏休みになるまで、生徒たちは、来る日も来る日も無言で坂を登り、無言で降りた…。
その年の卒業文集に、ある卒業生が書いた言葉。
「俺たちは、死ぬまで◯◯(蛾の名前)という名を忘れないだろう」
あれから30年以上たった今。
忘れてないよーーー。
名前も、あの光景もーーー。
予言、当たったわー。- 4
22/07/28 22:50:13