「コロナは富裕層の仕業」投稿に引き寄せられた居酒屋店主…[虚実のはざま]第4部 深まる断絶<2>

  • ニュース全般
  • 匿名
  • 21/09/10 23:30:08

 「マスク着用での入店はお断りします」

 居酒屋店主の男性が、新型コロナの感染対策を拒否する貼り紙をしたのは、今年3月のことだ。


北日本の繁華街で30年以上、妻と2人でのれんを守ってきた。海鮮料理と夫婦の気さくな人柄が常連客に愛され、家庭的な雰囲気の店だったという。

 しかし、昨年春に緊急事態宣言が発令され、3か月間休業した。営業を再開したが、客足は戻らなかった。

 賃料の負担は重く、蓄えはどんどん減っていく。周辺の飲食店は相次いで廃業していった。「この店は僕らの生きがい。失うなら生きている意味がない」とまで思い詰めた時だった。妻が偶然、SNSで見つけた投稿に引き寄せられた。

 <実はコロナは世界の富裕層の仕業><小さな自営業者を潰し、資産を吸い上げるのが真の目的だ>

 客がいない店内で妻と2人、スマホを手にひたすら情報を集めた。同じような説を唱える投稿ばかりが芋づる式に目に入ってきた。「今までだまされていたのか」と憤りが募った。

 店のツイッターで「うちはマスク不要」と発信を始めると、遠方からの客が増え、売り上げは持ち直した。店主の行動は感染を広げかねない危険なもので、一部の常連客は離れた。だが店主は意に介さない。

 「コロナ騒動は仕組まれたものだ。国や役所に従ったら犠牲になってしまう」

「何かおかしい」
 陰謀論に共感するSNS上の投稿を調べると、自営業者とみられる人が少なくない。飲食業を中心にコロナ禍で特に我慢を強いられ、経済的に打撃を受けているという共通点も浮かぶ。

 首都圏に住む男性(56)は、2019年にゲストハウスの経営を始めたばかりだった。訪日外国人の需要を見込み、貯金の大半を投資した。軌道に乗ってきた直後、コロナで観光客の姿が消え、目の前が真っ暗になった。

 「なぜ、こんなことが起きたのか。何かがおかしい」。そう考え、答えをネット空間に求めたことがきっかけだったという。

 人間は自力ではどうしようもない状況で、強い不安にさらされると極端な言説を信じやすくなる――。

 米国の心理学者の研究では、こんな結果が出ている。

 社会学者の辻隆太朗さんによると、過去にも海外でエイズやエボラ出血熱の流行時に、「黒幕がいる」「人口削減を画策している」とのデマが広がった。

 先行き不安が高まると、誰かのせいにできる単純明快な解釈を受け入れることで、「『自分は真実を知っている』という気持ちになり、不安定な心理状態が緩和されると考えられている」と辻さんは説明する。

 その上で「昔も今も陰謀論の内容は似ているが、SNS社会で影響力は格段に増した」と言う。

不安や孤独…
 人と会う機会の喪失は、リスクをより高める。米国の別の研究では、社会的な疎外感を抱える人のほうが、陰謀論を信じる傾向にあることもわかっている。

 埼玉県内で独り暮らしをする男性(55)は若い頃から対人関係が苦手で、勤務先の上司や同僚となじめずに職を転々とした。数年前から、同じ悩みを抱える人の交流会に参加し、「少し気持ちが前向きになっていた」という。

 だが、コロナで中止が続き、救いを求めるように自宅でツイッターにのめり込んだ。「ワクチンは人口削減が目的」などと主張する人に影響され、外出自粛の拒否を呼びかける活動にも加わるようになった。

 「今はこういう形でしか人とつながれない」。男性は心情を語った。

 筑波大の原田隆之教授(臨床心理学)は「科学的根拠のある情報を発信しても聞き入れない人がいるのは、不安や孤独、承認欲求、政治や社会への不満など様々な要因が絡んでいる。正しい情報を伝えることが重要なのは当然だが、それだけでは問題は解決しないことを認識し、対策を考える必要がある」と指摘する。

  • 0 いいね

利用ルール・禁止事項をご確認ください
誹謗中傷、個人情報、プライバシーを侵害する投稿は禁止しています。
また誹謗中傷においては、法改正により投稿者の情報開示について簡易な裁判手続きが導入されております。

古トピの為これ以上コメントできません

ママ達の声投稿されたコメントを掲載しています

画像表示ON・OFF

    • 1
    • ブリスケ
    • 21/09/11 00:15:53

    なんだか切ない。

    • 1
※コメント欄のパトロールでYahoo!ニュースのAIを使用しています

新しいトークテーマを作ろう

子育てや家事、旦那に関する悩み相談、
TV、芸能人に関する雑談など何でもOK!

トピックランキング

もっと見る

コミュニティカテゴリ