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- 服部半蔵(強い)
- 21/03/28 19:02:33
https://www.news-postseven.com/archives/20210328_1646957.html/5
2021.03.28 16:00
ビジネスの場で、あるいはテレビなどのメディアで、「させていただく」という言葉を見聞きしない日はない。なぜ、「させていただく」はこれほど使われるようになったのか?「させていただく」はそもそも、正しい敬語なのだろうか?敬語は人との距離を示す言葉であり、言葉は世を映す鏡である。「させていただく」を使うことで、私たちは何を得て、何を失っているのか──。「させていただく」ブームの背景について、『「させていただく」の語用論 人はなぜ使いたくなるのか』(ひつじ書房)の著者である法政大学の椎名美智教授に話を聞いた。
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◆「禁止させていただく」「努力させていただく」になぜ違和感を覚えるのか?
──「させていただく」の使用について、先生が違和感を覚えたり、これは間違っていると感じる使い方はありますか?
椎名:どんな使われ方をしていても、間違っていると感じるより、分析して面白がる気持ちのほうが強いですね。(略)決して『「させていただく」警察』ではありません(笑)。(略)
ただ、私だったら違う言い方をするだろうな、と思うことはあります。たとえば、駅などで見る、飲食を「禁止させていただく」などといったポスターの文言です。決定権があるのはあちら側なのに、こちら側に決定権があるかのように書かれているので、偽善的な印象を受けます。「申し訳ありませんが、ここでは~できません」という表現でいいと思うんです。またツイッターで、菅総理が「最大限努力させていただきます」と書かれていたのが、ちょっと気になりました。謙虚な表現ですが、「努力」は人に許可されてするものではなく、自発的に行うものなので、ここは「最大限努力します!」と言い切ってほしいですね。
──「させていただく」は現在、誰かに敬意を払うというより、使っておけば丁寧で問題ない、みたいな感じで使われるケースも多いように感じます。そもそも「させていただく」はどのような言葉なのでしょうか?
椎名:分解すると、「させて」と、“もらう”の敬語である「いただく」から成る言葉です。意味を見ていくと、「させて」で、人から何らかの「許可」をもらい、「いただく」で、人から何らかの「恩恵」を受ける。つまり本来は、許可や恩恵をもらう「他者=あなた」を前提とした言葉です。「あなたの許可を得て、ありがたいことに~をいただく」ということです。(略)
──どんな動詞にも付けられるから便利で、つい使ってしまいます。
椎名:その便利さが、ここまで広がった要因の一つだと思います。たとえば「食べる」だと、尊敬語は「召し上がる」で、謙譲語は「いただく」。敬語には言葉自体が変わるものがありますが、「させていただく」は、前に付ける言葉を変える必要がなく、うしろに付けるだけでいいんです。主語が常に「私」である、という点も大きいと思いますね。(略)
──「させていただく」はいつごろから使われるようになったのでしょうか?
椎名:さかのぼると、明治維新の頃から、「敬意のインフレーション」が起きてきたようなんです。社会の身分制度が表向きはなくなったことで、相手がどういう立場の人なのか、わかりにくくなったんです。そこで、失礼のないようにと、敬語がたくさん使われるようになりました。敬語は、相手との距離や上下関係を調整する言葉だからです。19世紀後半には「させていただく」が誕生しています。「させて(許可)」に「いただく(恩恵)」が付いて、身分社会でなくなるにつれて、敬意が盛り盛りになっていくわけです。それが20世紀末くらいから使用が増加し、今、大ブレイクしているという感じです。
>>1に続く
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