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- 後藤又兵衛
- 20/12/27 22:36:55
北朝鮮制裁違反の韓国船を中国が摘発。「泥棒が大泥棒に捕まって恥をさらした」と韓国紙
12/24(木) 12:27
韓国籍の貨物船が「瀬取り」(海上での船舶間の違法な積み替え)によって北朝鮮側に石油を供給していたとして、中国海洋警察がマカオ付近の海上でこの貨物船を摘発したと、韓国紙の有力紙、朝鮮日報(電子版)が24日伝えた。対北朝鮮制裁違反の“常習者”である中国に韓国船が摘発されたとあって、同紙は「泥棒が大泥棒に捕まって恥をさらした状況」と批判的に伝えている。
◇韓国政府の監視責任が問われる可能性
同紙は複数の韓国政府関係者の話として、韓国籍の石油化学製品運搬船「L号」が12日、マカオ付近の海上で、中国海洋警察に抑留されたと報じた。当時、韓国人4人を含む約20人が乗船していたという。
中国海洋警察は、L号が海上で、国連安保理の対北朝鮮制裁決議で禁じられた「瀬取り」によって北朝鮮側に石油を販売したことを把握し、追跡していた。L号は1週間余り、立ち入り検査を受け、先週末に解放されたという。
韓国の船舶が対北朝鮮制裁違反の疑いを受けた例は2018年にもあり、この時も「瀬取り」によって北朝鮮に石油を輸出し、日米当局によって捕捉された。
ただ、同紙は「対北朝鮮制裁の最大の妨害国である中国で、韓国が『制裁違反』の指摘を受けるのは極めて異例のことだ」と記している。韓国政府関係者は同紙の取材に「個別の船舶による逸脱行為であったとしても、韓国政府の監視責任が問われる可能性がある」と懸念を示している。
そのうえで、同紙は「韓国籍の船舶が北朝鮮と密貿易して中国当局の立ち入り検査を受けるのは『泥棒が大泥棒に捕まって恥をさらした状況』にほかならない」と批判している。
◇米国へのメッセージか
中国には、これまで対北朝鮮制裁決議に従わなかった例が数多くある。同紙が伝えた安保理の制裁委員会のデータによると、中国の制裁違反は今年摘発されただけで60件を超えるという。
そんな“常習者”の中国が、韓国船に対する立ち入り検査を強行したことを、同紙は「米国に向け『自分たちだけを問題視するな』というメッセージを送ったという解釈が出ている」との見解を伝えている。
米国は経済制裁を北朝鮮の核問題解決のための重要な手段ととらえている。このため米国は中国に対し、制裁を履行するよう圧力を強めている。最近でも米側は、北朝鮮と中国の間で違法な石炭取引が繰り返されていると指摘し、特に北朝鮮籍の船舶がこの1年間に中国浙江省寧波市や舟山市で数百回にわたり石炭を直接積み出したと明かしている。
同紙は「米国は中国をターゲットにしているが、中国は韓国の違反事例を確保して『核心当事国である韓国に“穴”があいているではないか』と反撃するかもしれない」と危惧している。
https://news.yahoo.co.jp/byline/nishiokashoji/20201224-00214224/
西岡省二
ジャーナリスト
大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。
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