「コロナは茶番」侮る人の大量発生を防げない訳

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    • 今川義元
      20/12/27 14:57:42

    人類を霊的進化に導く「宇宙の計画」とする声も
    専門家やメディアが発信する情報でパニックに陥っているとコロナは人に牙を剥き、逆に愛と真心で迎え入れると無害化されると論じるインフルエンサーがいる。しかも、次元上昇や霊的進化といった精神の成長をほのめかしているのが特徴だ。例えばチャネラーで有名なウィリアム・レーネンは、コロナは人類を霊的進化に導くための「宇宙の計画」だと断言している(ウィリアム・レーネン『アフターコロナと宇宙の計画』伊藤仁彦訳、ヒカルランド)。

    これらは、あらゆる物事の背景に「何らかの主体的な存在」を探そうとする進化心理学の理論をなぞるものだ。

    認知科学者のダニエル・C・デネットは、それを「志向的な構え」と名付けている。

    デネットは、「志向的な構えとは、(人間、動物、人工物を問わず)ある対象の行動について、その実体を、『信念』や『欲求』を『考慮』して、主体的に『活動』を『選択』する合理的な活動主体と見なして解釈するという方策である」と説明する。つまり「志向的な構えとは、わたしたち人間がおたがいに対して持っている態度や観点であり、したがって、これを人間以外の他のものに当てはめるということ」なのだ(ダニエル・C・デネット『心はどこにあるのか』土屋俊訳、ちくま学芸文庫)。

    わたしたちは長い進化の過程で、他者の心に対する関心を強め、内省的思考を身に付けた結果として、自然の事物に心や魂があるとするアニミズムへと発展した。これが現在も、わたしたちが世界を認識する際にも無意識に用いているというわけである。

    かつて自然界の舞台裏に神々や妖精、トロール(小鬼)などの「主体」を幻視することがアニミズム的感受性であったとすれば、自然がコミュニケーション不可能な物理的対象となった結果として、昔ながらの思考の癖や構え自体は残存してしまうことから、わたしたちはその慣れ親しんだ感受性にならって社会の内部、あるいは世界の外側に「主体」を幻視しているだけかもしれない。つまり、古代において神々や妖精の仕業としていたものを、現代では秘密結社や宇宙意志の仕業へとアップデートしただけともいえる。

    確かにどこかに首謀者がいて、その目的を知ることができることは、わたしたちの滅入った気分を落ち着かせるのに役立つだろう(ウイルスとコミュニケーションが取れるという立場はその最先端である)。刺激的な物語とネットコミュニティーは、その信念に特別な意味を与えてくれる。しかし、実態としてエイズ否認主義の結末と同様に、コロナ禍に対する現実離れしたものの見方は、世界中で犠牲者数を増大させる片棒を担いでしまう。

    コロナは存在しないと信じていたインスタグラマーの死
    100万人超のフォロワーを抱えていた人気インスタグラマーの死はあまりにも象徴的だ。コロナによる合併症で亡くなったその30代の男性は、感染が判明するまでコロナは存在しないという陰謀論を信じていたことを悔いていた。
    わたしたちが犯人探しに興じやすいのは決して奇妙な傾向ではない。進化の過程を辿ればまったく正常な反応ともいえる。けれども、それは今や自然災害などといった偶然の産物には不向きだ。概して極端な方向へと舵を切りやすい。それは結局のところ、感染症対策を徹底しつつ経済活動を行うという綱渡りに石を投げる行為を招く。

    行動変容に従わない者の厳罰化といった規制強化を要求し自粛警察を買って出る極端さ、特定のワクチンの欠陥からあらゆるワクチンの有効性を否定する反ワクチンへと傾倒する極端さ、その両極からできるだけ距離を置いたほどほどのリアリズムこそが重要である。わたしたちが避けなければならないのは、清涼剤に似た極端さへの誘惑なのだ。

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