- ニュース全般
- 寛治
- 20/05/03 02:24:47
コロナ後に「脱東京」の本社移転を考える企業が増える可能性
コロナ感染拡大に収束が見えないままゴールデンウィークに突入した。「STAY HOME」はやむを得ないが、GW中の巣ごもり生活は“ポストコロナ時代”の働き方を考えるうえでも貴重な時間。いつか来る収束後の社会はどう変わるのだろうか──
コロナ感染拡大状況下でビジネスマンの仕事環境が様変わりしている。在宅勤務(テレワーク)が一気に普及し、打ち合わせや会議もズームなどのアプリを使ったリモートスタイルが日常化しつつある。メディアの現場も一緒で、記者会見もズームなどで行っている。
その結果、混雑率が180%を超えていた都内の通勤電車は信じられないほど人が減り、回数が減った通勤も座ることが可能になったという声も聞く。「ポストコロナ時代」に向けた変化の予兆が随所に出始めているのだ。
今回のコロナ禍で改めてクローズアップされたのが東京一極集中リスクの怖さだ。全国の感染者数をみても東京が圧倒的に多い。当然だろう。人口1395万人(昼間人口は1592万人)という世界有数の超過密都市・東京は、あまりある魅力を備える一方で、過密さゆえのリスクは他の都市とは比べ物にならないほど大きい。
しかもリスクは感染症被害だけではない。首都直下地震、富士山大噴火、大型台風、ゲリラ豪雨などいつ見舞われるかしれない自然災害による被害も計り知れない。そんなリスクの巣窟に政治・経済の中枢機能が一極集中している現状に危機感は高まる一方だ。
東京を拠点に事業を継続すること、東京に暮らすことにどれだけの価値があるのか。多大なリスクを上回る魅力とメリットがまだあるのだろうか。ポストコロナ時代に起こり得る現象の一つは「脱・東京」の動きである。まずは、企業の本社移転が進むのかどうかを検証してみよう。
企業の本社移転に関しては、参考になる調査結果がある。帝国データバンクの「1都3県・本社移転企業調査」(2018年)だ。1都3県は東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県のいわゆる「東京圏」である。
2018年に本社が1都3県から転出した企業は285社で、2年連続で前年を上回った。一方、1都3県への転入は308社で、8年連続の転入超過となった。転出先の上位は(1)茨城県/39社(2)大阪府/38社(3)愛知県/22社(4)静岡県/18社(5)栃木県/16社の順。
「新幹線や高速道路など交通の便が良く、大都市や首都圏とのアクセスが良好な府県への移転が多数を占めました。あとは福岡県(2018年は10位、2017年は4位)のように、企業誘致に向けた自治体の取り組みが積極的な地域への移転もここ数年多く見られます」(帝国データバンク東京支社情報部の瓦田真人氏)
東京圏への転入が多い状況は変わっていないが、政府の「地方拠点強化税制」を軸とした移転支援政策もあり、地方への移転の動きもそれなりに増えてきている。2017年は279社で前年比28.6%増、2018年は285社で同2.2%増。これが最近までの状況だ。
◆バブル崩壊後は12年連続で転出超過
本社移転の調査結果を過去にさかのぼって検証すると、注目すべき傾向がある。バブル崩壊の1991年からITバブル崩壊の2002年まで、なんと12年連続で転出超過となっているのだ。
最多は1994年の328社で前年比40%の大幅増となっている。この年はバブル崩壊の後遺症が続く中、企業が投資行動を抑制し、金融機関の貸し出しも低迷。円高が加速して戦後初めて1ドル=100円を突破。消費税が5%に引き上げられ、完全失業率は3%に達していた。リーマンショック直後の2009年も前年比16%増の295社が転出している。
これまでの企業の本社移転は景況感の悪化とリンクすることが多い。景気が悪化する中で高コストの東京に本社を構えていられなくなる企業が増えることも一因か。
2020年に話を戻そう。4月の月例経済報告はリーマンショック後以来10年11か月ぶりに「悪化」の表現が使われ、「景気は急速に悪化しており、極めて厳しい状況にある」と強調した。日銀のさくらリポート(4月)も2009年1月以来11年3か月ぶりに国内の全9地域の景気判断を引き下げた。景気は明らかに下降局面を迎えている。
>>1続く
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