- なんでも
- 寛和
- 20/02/24 22:47:09
「…で、さっきの話の続きだけど、ウィルスは生物じゃないから、そもそも死ぬという言い方はおかしい」
「生物じゃなければ何なの？」
「DNAを持った物質」
「DNAって何？」
「自分のコピーをつくるための設計図だと思えばいい」
「それを持っていたら生物じゃないの？」
「生物の重要な定義の一つは自己増殖できること。例えば、池の藻はどんどん増えていくでしょ？ 人間や動植物の細胞も同じ、細菌も自己増殖する。ウィルスにはその能力がない」
「でも、ウィルスも増えるよね？」
「ウィルスは生物の細胞に入り込んで、その細胞の機能を利用して増えるんだよ。細菌であれば、動物の死骸や食べ物でも繁殖できるけれど、ウィルスは生物の体内でしか増殖できない」
「あ、そこ」
「ん？」
「そこ気持ちいい」
「あ、うん。分かった」
「じゃあ、菌と違って、放置しておいた食べ物を食べて感染することはないんだね」
「基本的にはそうだね。表面に付着したウィルスを口にして感染することはあり得るけど」
「ウィルスが入り込んだ細胞はどうなるの？」
「自らが使うはずだった機能やエネルギーをウィルスに使われて、ほとんどの場合は死ぬ」
「細胞が死ぬとどうなるの？」
「ウィルスに感染して細胞が大量に死ぬと、それを排除したり、修復したり、新たな細胞をつくろうとしたりする免疫機能が働いて、炎症が起こる。具体的には、熱や痛みが出たり、肺や気管で起これば咳が出たりするわけだね」
「じゃあ、炎症は悪いことじゃないんだ？」
「そうだね。それは体が自らを維持するための仕組みが正しく働いている証拠だから。ただし、ウィルスによる細胞死のペースがあまりにも早いと、組織の修復が追いつかなくなって、その組織が機能を失う。例えば、肺が機能しなくなって、呼吸困難を起こして亡くなるわけだね」
「お年寄りの方が死にやすいのはなぜ？」
「免疫機能が落ちているから。特に基礎疾患を持っている人は、その修復もしなければいけないから、追いつかなくなりやすい」
「ふーん。今度、私が上になる」
「あ、うん」
「どう。気持ちいい？」
「うん」
「どうすればウィルスは死ぬの？」
「ウィルスは死なない。ただし、不活化といって、人間の細胞に入り込む能力を失うと、感染の恐れはなくなる。人間の免疫機能が勝っているときは、そもそも入り込めないし、入り込んでしまっても、既知のウィルスであれば、それを抗ウィルス剤で不活化させることができる。コロナウィルスもそれを開発しようとしているわけだね」
「薬を使わないと、ウィルスは倒せないの？」
「いや、ウィルスは生体に入り込めなければ、すぐに不活化する。例えば、ウィルスの構造を維持するために必要な水分を失ったりして。今、ウィルスに感染した人から２メートル以上離れるように指示されてるでしょ。あれは、ウィルスは空気中で２メートル移動することもできないからなんだ」
「え、でも、ウィルスは乾燥を好むんじゃないの？」
「乾燥が好きなわけじゃない。むしろ、苦手と言うべきだろうね」
「じゃあ、なぜ冬に流行るの？」
「２つ理由がある。乾燥していると、水分を失ったウィルスが軽くなって、埃なんかと一緒に舞いやすくなる。それを人間が吸い込んで空気感染するわけだね」
「じゃあ、湿度の高い部屋にいれば感染しにくい？」
「その通り」
「冬に流行るもう１つの理由は？」
「ウィルスは生物ではないけれど、元の状態に戻ろうとする性質がある。水分を失ったウィルスは、水分のあるところに移動する。それで７割が水でできている人間の体に侵入しやすくなるわけだね」
「あ、私イキそう」
「いいよ」
「あなたまだでしょ。もう少し我慢する」
「ありがとう」
「マスクは予防の効果がある？」
「コロナウィルスは市販されているマスクの網目よりはるかに小さいから、そういう意味での予防効果はない。ただし、喉の粘膜を保護するから、間接的には効果があるだろうね」
「お湯を飲むのは？」
「同じ理由で効果がある。ただし、飲むよりうがいした方がいいだろうね」
「コロナウィルス対策でいちばん効果があるのは？」
「風邪をひくことも含め、喉を傷めないように気を付けること。そのために栄養と睡眠をしっかり取ることだね。健康な状態であれば、喉の粘膜がウィルスが細胞に入り込むのを防いでくれるし、免疫機能がきちんと働いていれば、体内に侵入した異物を追い出してくれる」
「人混みに出かけないことも大事？」
「もちろん。ただし、健康な大人はそこまで恐れる必要もない。人混みを避けすぎることのデメリットもあるわけだから。体調と相談だね」
「あ、気持ちいい」
「僕もイキそう。いい？」
「うん」
「あ」
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