• No.2 主 文久

    19/06/04 11:51:45

    加害者だけを報じるべきなのか

    関係者への取材を元に、被害者の人物像を報じることへの批判もたびたび、上がっている。多く聞かれるのは「被害者よりも加害者について報じるべきだ」という指摘だ。

    津田教授は、こうした言説の危険性を、以下のように指摘する。

    「容疑者段階で犯人扱いしてしまうことや、メディアに社会的制裁をする権限を与えることは許されるのか、という問題点があります」

    「また、加害者側の過去の家庭環境や境遇にスポットを当てることで、意図せずして免罪しているような印象を被害者が持つようなこともあります。理解するということは、許すこととつながっている部分があるのです。そのこと自体が、被害者自体を傷つけてしまう」

    もう一点、指摘するのが「集団的記憶」という側面だ。

    ニュージーランドのモスクで今年3月に起きた銃乱射テロでは、加害者のことを記憶から抹消するべきだという声も出ている。BBCによると、ジャシンダ・アーダーン首相は以下のように語っている。

    《「皆さんは、大勢の命を奪った男の名前ではなく、命を失った大勢の人たちの名前を語ってください。男はテロリストで、犯罪者で、過激派だ。私が言及するとき、あの男は無名のままで終る」》

    「今回の川崎のケースに関しては、動機が明らかになっていない」と前置きをしたうえで、津田教授は語った。

    「テロなど、社会への怨恨から起きた犯罪で、社会的に認知されることに目的がある加害者側を大々的に報道するということは、結果として加害者を社会的に承認し、集合的記憶にとどめてしまうという部分もあるかもしれません」

    そのうえで、津田教授は「メディアを批判するあまり、被害者の声を封じ込めてしまうのはよくないこと」とも語った。

    「批判する側にも、ある種の思い込みがあります。被害者はとにかく放っておいてほしいもの、アプローチすること自体が失礼にあたるのではというイメージです。一方で、取材されないことで傷つくこともある。言いたいことがあるにもかかわらず、メディアが来てくれなかった、という声もあります」

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