硫黄島守備隊の生き残りである祖父が映画『硫黄島からの手紙』を見た感想を書き残したいそうです。

匿名

昭和

19/05/17 20:57:07

去る7日に祖父が亡くなりました。

その祖父が生前『硫黄島からの手紙』を見て、手記をしたため、これをどこかに発表してくれと私に頼んでいたのですが、出版社などに伝手なく、ホームページも持っておらず、ひとまず、日ごろ使い慣れたこの掲示板に掲載させていただくことで、約束を果たすことにしました。

お目汚しのことと思いますが、ご一読ください。以下、手書きであった祖父の手記を活字に打ち直したものです(読みやすさを考慮して、若干の修正を加えています)。

「映画『硫黄島からの手紙』を見た。監督のクリント・イーストウッド氏にまずは敬意を表したい。今のご時世、日本人の監督でも、このような映画はなかなかつくれはすまい。しかしながら、多くの違和感があったのも事実である。私は硫黄島守備隊の生き残りである。後世への責任として、愚見をここに記しておきたい。
 まずは些細なことだが、硫黄島での特徴的な食糧事情が描かれていない。確かに米も水も不足していた。しかし、我らはわずかな米と缶詰だけを食っていたのはない。硫黄島にはヤシやバナナやタコの木(これも実がうまい)があったし、畑ではパイナップルが栽培されていた。これらも兵の食糧となった。
 木の実があれば、そこに虫が集まる。虫がおれば、鳥も集まる。我らはよくメジロを罠にかけて食った。虫も食った。しかし、ミミズは食ったことがない。映画でも栗林忠道中将のために主人公の西郷一等兵が「ミミズを捕ってこい」と命じられる場面があるが、硫黄島にミミズはいるのだろうか?何しろ、地面に飯盒を埋めておけば飯が炊けるほど地面が熱いのである。ミミズが生息できるとは思えぬ。ヘビもカエルもおらん(おれば兵がみな食ってしまっただろう)。虫は食った。そういうものを食えない者から死んでいったのである。
 また、栗林忠道中将をはじめ将校たちが戦場でじゃらじゃら勲章をつけているのも大いに違和感がある。それよりも描くべきは兵たちの階級章であったろう。兵たちは突撃に出たら生きては帰れぬ。その決死の突撃を前に二階級特進するのである。兵たちは新しい階級章を嬉しそうにつけて死んでいった。
 中村獅童演じる海軍大尉が陸軍の西郷一等兵らに突撃命令を下し、それを西竹一陸軍中佐に撤回せられると一人で穴から出ていき、爆弾を抱いて死体の中で寝そべっている、という場面があったが、めちゃくちゃである。海軍大尉が陸軍の部隊に命令を下すおかしさも去ることながら、死体の山を踏みつけながら戦車が通過していくとでも思ったのだろうか。
 実際には、夜中のうちに二〇キロ爆弾を背負って敵の戦車が通るはずの地点に進出し、タコ壺と呼ばれた縦穴を掘って、そこに身を潜め、明け方、戦車が進出してきたところで飛び込むのである。これは実に有効な攻撃で、多くの日本兵の命と引き替えに多数の敵戦車を撃破せしめた。
 しかし、これまでに述べたのは枝葉末節の事柄である。
 最大の違和感は、兵たちがみな「国から強制されてイヤイヤ戦わされてる弱い庶民たち」として描かれてることだ。
 そういう兵も中にはいただろうが、当時は帝国主義、軍国主義の時代である。平和と人命が何よりも尊重される現代とは感覚が違う。召集兵であろうと志願兵であろうと、戦場に来たからには軍人である。
 もちろん、死にたくはない。家族のために生きて帰りたい。しかし、生きては帰れぬと分かった以上、覚悟は決まるのである。軍人として天晴れな働きをしたい。潔く戦って散るまでだ。さあ来い、敵さん、日本軍の強さを見せてやる、というのが多くの兵たちに共通していた心情だろう。栗林忠道中将は「諸氏待望の敵来る。最後の一兵となるもゲリラとなって敵をなやませ」と訓示されたが、我々にとって敵大艦隊の来襲は、まさに「待望の敵」であった。だからこそ、あれほど敵に大打撃を与え得たのである。
 映画『硫黄島からの手紙』は、戦争を嫌がっていた西郷一等兵が、栗林忠道中将の遺品であるピストルを盗もうとした米兵にスコップで殴りかかるという印象的な場面で終わる。西竹一中佐の遺言となった「自分が信じる正義のために戦え」が心に刻まれてもいたのだろう。ヒューマンドラマとしては大変に面白い。しかし、戦争というもの、あるいは歴史というものを現代のヒューマニズムで解釈しようとすると、大きな間違いの元となる。
 戦争は良くない。しかし、戦わねばならぬときがある。硫黄島で死んだ兵たちは、イヤイヤ戦わされていたのではない。祖国を守るという大義のため、軍人としての誇りを持って戦い、見事に花と散ったのである。それは、命を大事に思うこと、家族を愛おしく思うことと何ら矛盾しない。」

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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