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- 19/02/13 11:57:49
2016年4月の熊本地震で夫を失った熊本県益城(ましき)町寺迫(てらさこ)の村田千鶴子さん(85)が、亡くなる数時間前の夫の言葉を励みに、自宅再建を果たした。1月下旬、仮設住宅から新居に移った村田さんを迎えたのは、64年前に夫が植えてくれた結婚記念樹の枝垂(しだ)れ梅。ほころび始めた薄紅色の花に、村田さんは語りかける。「お父さん、何とか家ば建てたよ」
村田さんは1954年12月、2歳上の夫恵祐さんと結婚した。その記念に翌年、恵祐さんが自宅の庭に植えてくれたのが4本の枝垂れ梅だった。1本は後に枯れたが、3本は恵祐さんが丹念に手入れを続け、幾多の酷暑や台風、厳寒にも耐え、毎年花をつけて夫婦を楽しませてきた。
61回咲いた花が散って1カ月が過ぎた2016年4月14日夜、益城町を最初の震度7の激震が襲った。翌日、柱が傾き、物が散乱した室内を片付けた夫婦は、停電で暗い屋内にろうそくをともしてその夜を過ごし、恵祐さんはこう言い残して床に就いた。
「こん家は解体し、小さか家ば建てて、また一緒に暮らそう」
その数時間後、再び震度7を記録する本震が起きた。村田さんは倒壊したがれきの下から助け出されたが、恵祐さんは、村田さんに覆いかぶさるようにして亡くなっていた。
子供がなく、高齢で独り暮らしでもあるため、村田さんは家を建てるかどうか悩んだ。背中を押したのは、亡くなる直前の恵祐さんの言葉だった。
仮設住宅から完成した新居へ移ってきたのは1月下旬。「主人の遺志を継いで建てた家でしょ。しばらくここで一緒に過ごしたいけん」。恵祐さんの遺骨は今も納骨せずに仏間に置いている。
恵祐さんが植えた枝垂れ梅は、例年2月の終わりから3月の初めに満開になる。ただ、過去に1度だけ暖冬で恵祐さんの誕生日である2月16日に満開になった年があった。
今年の冬も暖かいせいか、1月末からつぼみがほころび始め、既に7分咲きになっている。村田さんは、一足早く色づく梅が、仮設住宅から戻った自分をねぎらってくれているように感じている。
「この分だと今年は主人の誕生日に満開になるとじゃなかでしょうか。それを一緒に眺めてから納骨しようと思いよっとですよ」。村田さんに、節目の春が近づいている。
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