- 妊娠・出産
- かに
- 18/09/11 13:06:23
https://wezz-y.com/archives/52749
※この記事はメタモル出版ウェブサイトに掲載されていた森戸やすみさんの連載「小児科医ママの子どものケアきほんの『き』」を再掲載したものです
先日、ある妊娠中の女性が、授乳中の友達の乳房が大きくなって形が崩れているのを見てショックを受けたという理由で「私は絶対に粉ミルクだけにして、母乳はあげないと決心しました」と言うので驚きました。母乳育児の盛んな現代の日本で、母乳の利点のこと、母乳をあげなくても妊娠・出産すると乳房は大きくなることをまったく知らないようだったからです。40年以上前の日本によくあった考え方ですね。
改めて、母乳のよい点をおさらいしましょう。
まず、お母さん側のメリットから。母乳をあげたほうが増えてしまった体重も、大きくなった子宮も元に戻るのが早くなります。つまり、前述の方のように体型を気にするなら、母乳をあげたほうがいいと言えるでしょう。さらにお母さんが将来、乳がんや卵巣がん、骨粗しょう症になる頻度も下がります。
次に、赤ちゃん側のメリットとしては、感染症にかかる確率が低くなり、乳幼児突然死症候群などの病気も予防できる可能性があります。だから、母乳が無理なく出て、お母さんの負担になりすぎるわけではなければ、赤ちゃんにはぜひ少しでも多くの母乳をあげてほしいのです(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/apa.13136/full)。
でも、「母乳育児はつらい」と言うお母さんは少なくありません。どうしてでしょうか。それは大まかに以下のような理由が挙げられます。
(1)軌道にのるまで頻回授乳が必要だから
母乳は、産後すぐから頻繁に授乳することで出やすくなります。でも、産後すぐは、まだあちこちに出産による痛みや疲労が残っていたり、母乳がスムーズに分泌されるまでは乳房や乳首も痛かったりしますし、なかなか大変なことは確かです。
(2)適切な指導や支援が受けられないことがあるから
母乳について指導する助産師や看護師が足りないことがあります。出産は予定通りコンスタントに進むものではないので、出産が続くとスタッフの数がどうしても足りなくなります。だから、支援が必要なお母さんに必ずしも充分な支援が行き届きません。また、授乳姿勢や負担のかからない方法が周知されていない、助産師によって言うことが違うということもあります。
(3)母乳をあげにくい人もいるから
母乳の産生量には個人差があり、出産後スムーズに母乳が出る人ばかりではありません。約1割は、さまざまな理由で充分な母乳が出ないと言われています。そういった体質に加え、②の適切な授乳指導や支援をしてくれる人の有無、授乳以外の家事・育児の手伝いをしてくれる人の有無などの社会的環境、お産直後の精神状態、健康状態も人によって違うため、必ずしも頻繁に授乳できるとは限りません。
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