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- 山椒
- 17/03/11 07:49:20
ナショナル ジオグラフィック日本版 3/10(金) 17:07配信
おなかの袋に守られて生き延びた小さな命、救出の瞬間
2017年2月下旬、オーストラリア・ブリスベーン近郊の路傍に、けがをしたカンガルーが倒れていた。発見者の夫婦が近づいてみると、メスのカンガルーはすでに死んでいたが、おなかの袋の中から小さな赤ちゃんカンガルーが見つかり、保護された。
撮影された動画には、母親のおなかの袋から赤ちゃんカンガルーをそっと助け出す様子が写っている。動画を撮影したマシュー・ドリュー氏と妻のモニク氏は、定期的に一帯を見回り、病気にかかった野生動物やけがをした野生動物がいないか、目を配っている。道端に倒れたカンガルーを見つけると、2人は即座に車を止めた。
「倒れたカンガルーはまだ生きているのか、おなかの袋に赤ちゃんがいないかを確認したかったんです。袋の中には、小さなメスの赤ちゃんがいました」。袋から赤ちゃんを助け出したドリュー氏は、こう話す。
夫妻は赤ちゃんカンガルーを地元の獣医師のところへ連れて行った。
ドリュー夫妻はこの事件の半年前にも、同じようにして赤ちゃんカンガルーを助けたことがあり、その子も今のところ元気に育っているという。どちらの例でも、母親は車にはねられた可能性が高い。オーストラリアでは、動物がらみの交通事故の9割近くがカンガルーによるものだ。車にひかれて路傍に横たわるカンガルーを、ドリュー氏はよく見かけるという。
おなかの袋は安全な隠れ家
カンガルーの子どもは母親のそばで育つ。生まれたばかりのカンガルーは豆つぶほどの大きさだが、母親のおなかの袋まで自力で移動する。袋の中で過ごす期間は長くて1年ほど。赤ちゃんカンガルーにとって、母親のおなかの袋はどこよりも安全な隠れ家だ。袋を使わなくなってからも、1カ月から半年ほどは母親のもとで母乳を飲んで育つ。
母親がけがをしたり死んだりして子育てができなくなった場合も、袋と同じような環境をうまく再現できれば、赤ちゃんは生き延びることができる。それには赤ちゃんを温かく保ち、カンガルーの母乳と同じ栄養を含む特別な調合乳を与えるなど、きめ細かい世話が必要だ。
カンガルーは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで低危険種(Least Concern)に分類され、食肉や毛皮のために数百万頭が合法的に捕獲されている。オーストラリアのカンガルーの生息数は、推定3000万頭から5000万頭。カンガルーの交通事故が多いのも、生息数が多いためだ。
カンガルーの頭数をどう管理すべきかは議論を呼んでいる。オーストラリアでは、草地を保護し、家畜との競合を緩和する目的で、カンガルーの駆除が定期的に許可されている。
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